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53.心に決める3
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「な、どうしたんですか?」
水野谷はビックリして彼を見る。
「課長さん。どうも。いつも家の蒼がお世話になって……」
いつの間に関口家の人になってしまったんだろう……。
反論しようにもする暇もなく、圭一郎は続ける。
「あいつが、のうのうと芸能人気取りをしている間に、蒼に万が一のことがあったら大変だと思いましてね。ちょっとご挨拶にと……」
「あ、そ、そうですか」
あははと水野谷は笑う。
テレビではおじさんタレントが『頑張ってくださいね。これからも注目していきましょう』とコメントを添えて、違う話題になっている。
「ちょっと。課長さん。お時間もらえます?」
「はい?」
圭一郎は「お邪魔したね!」と豪快に手を振って水野谷を連行していった。
「恐ろしい」
「世界のマエストロは、至ってトンチンカンだ……」
テレビを消し、休憩時間も終わりなので、それぞれは午後の準備に取り掛かる。
そんな様子を見つめて、蒼はため息を吐いた。
「気になるか?蒼」
星野はそっと問いかける。
「星野さん」
「おれもマエストロの意見に同感だね。あいつは世界に飛び出していったけど、心はここにあると思っている。あいつの原点はここだからね。ここをないがしろにするような奴だったら、蒼も考えたほうがいいぞ?」
「え?」
彼はにやにや笑って歯磨きをしに出て行った。
関口が星音堂を?
そんなことはない。
だって、あんなにここが好きで仕方がないんだから……。
そうだ。
関口に限ってそんなことはないはずだ。
いくら有名人になったからって、星音堂をどうでもいいなんて考えるような人ではない。
大丈夫。
関口はきっと帰ってくる。
そう信じて待つのが自分の仕事だもんね。
蒼は自分に言い利かせていた。
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