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98.剔抉2
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なんでだ?
なんで。
圭一郎がここに!?
蒼は顔に手を当てる。
しまった。
よく考えればわかることだ。
明日の本番まで。
圭一郎がいちいち、東京に帰るとは思えない。
そうなると、ホテル……だけど。
圭がいるのだから、そこに寄るのは想像できたことだ。
「あれ?」
羽根田は圭一郎に気付いたようだ。
車を脇に寄せ、出てくる。
「先生」
「おお!社長!!」
圭一郎は嬉しそうに羽根田に挨拶をする。
「なんでここに?」
「ここはおれの息子の家だ。そういう君は?」
圭一郎はふと後ろの蒼を見て笑う。
「蒼は誰とでも仲良くなるな」
「先生は知っているんですか?」
羽根田は目を丸くする。
「知り合いもなにも。お父さんみたいなものだからな!」
「お父さん……!?」
羽根田がびっくりする。
蒼も吹き出した。
「おーい!お客様だぞ!!」
こんな深夜に大声は勘弁だ。
中から有田と圭も迷惑そうに顔を出す。
酒を飲んでいたらしい。
珍しく、有田が顔を赤くしていた。
「蒼。お帰り」
「ちょ、ちょっと。ともかく。中に入りましょう、中に」
蒼はあわてて、みんなをおしこめる。
これ以上の騒ぎはごめんだ。
「な、なに?」
圭も酔っぱらっているらしい。
思考が回っていない。
居間に入って、原因が分かった。
一升瓶が数本転がっている。
蒼が大切にしていたお酒なのに。
なんだか悲しい。
「三人でこれ全部飲んだの?」
蒼はあきれる。
「ごめんって。夜だし。買いにもいけなかったし。蒼は帰ってこないし」
最後の一説が本音だろう。
蒼があまりにも遅いし。
知らない輩と食事だなんて。
圭にとったらやきもきしないではいられない事件だ。
そんなところに、圭一郎までやってきて。
大騒ぎしないでいられないではないか!
圭の説明はそういうことらしい。
しかし。
有田まで。
「有田さん……」
蒼はあきれて彼を見る。
「申し訳ない。日本酒。好きなんです。すみません。それに、マエストロと圭くんがなんだかいい調子の雰囲気なものですから。水を差すのも悪いと思いまして」
こちらは、最初の一説が本音だろう。
最後は取ってつけたような言い訳だ。
「楽しそうですね。私も入れてもらいたいものです」
そこで、加わるのが羽根田。
勘弁してほしい。
結構、疲れているし。
「うちの息子とそこにいる蒼娘はいい仲でね……」
圭一郎はぺらぺらと話をしだす。
「お父さん!!」
圭はあわてて、圭一郎にタックルを食らわす。
「ぐへッ!!」
「酔っぱらうと、妄想、妄想で困った父親なんです」
羽根田は苦笑している。
どこまで本気にしているのかどうか。
顔色は読めない。
酒が不足しているが、圭一郎と羽根田と一緒にするのは危険。
圭も酔っぱらい。
蒼が買い出しに出ることになる。
おかしな夜だ。
明日も大変なのに。
大きくため息を吐いて、蒼は夜の街に出て行った。
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