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〔 彼方 side 〕
走って 、 とにかく走った 。
喉が痛くなっても 、 脇腹が痛くなっても 、 足を捻っても 、 止まることなく凛の家へ走った 。
片手に握った犬の飴は粉々になったけど 、 それどころじゃなかった 。
早く会いたい 。
会って 、 ちゃんと俺の気持ちを言いたい 。
凛の声から 、 凛の気持ちを聞きたい 。
他の人に取られて終わるなんて 、 絶対にやだ 。
見慣れた住宅街 、 もう少しで凛の家に着く 。
帰ってきてるか分かんないけど 、 そんなの関係ない 。
「 は 、 はぁ …… ゲホッ 、 」
息を吸う暇もなくて 、 ポタポタと流れる汗を拭う 。
アパートの階段を登って 、 左 。
見慣れた玄関の前に 、 凛と林さんの姿 。
林 : 「 ねぇ凛くん 、 今日ぐらい良いでしょ〜? 」
凛 : 「 帰れって 。 」
林 : 「 でもぉ 、 彼女いないって言ってたしぃ 。 」
甘い声で凛の腕を引いて 、 扉を開けろと促す 。
俺には特別なものなんて何もないから 、 林さんみたいに可愛い子は羨ましい 。
引き止める術がない俺には 、 ただ見てるだけしか出来ないんだから 。
でも 、 俺は変わったんだ 。
「 凛!! 」
くよくよしてちゃ 、 始まらない 。
俺なりの言葉と態度で 、 凛と付き合っていくんだ 。
林さんに 、 渡してたまるか 。
凛 : 「 …… 彼方 。 」
林 : 「 あれ?彼方くんだぁ〜 、 どうしたのぉ? 」
怯むな 、 頑張れ 。
どんなに下手くそな言葉でもいいから 、 何か言え!
「 … 宮原 、 迷惑してるから 。 それに 、 女の子は苦手だって言ってたし …… 。 」
林 : 「 え?別に大丈夫だったよ〜 、 ほんとにどうしたの? 」
「 か 、 隠してるだけだ!宮原は優しいから 、 傷つくようなこと言わないし 。 」
林 : 「 それに彼方くんと何の関係があるの?部外者は黙ってなさいよ 、 ね?凛くん♡ 」
やばい 、 やばい 。
顔も上げられないし 、 怖くて仕方ない 。
こんなこと言って 、 凛に呆れられたらどうしよう 。
嫌われる覚悟で来たけど 、 やっぱりそれはそれで怖いし 。 林さんは声色変わってるし 、 心が折れそう 。
凛 : 「 …… ほんと 、 部外者は黙ってろよ 。 」
林 : 「 え?ちょ 、 凛くん!! 」
俯いていた足元に 、 見慣れた靴 。
ゆっくり顔を上げると 、 苦しそうに眉を寄せた凛がいた 。 隣には林さんなんていない 。
凛は俺を引き寄せると 、 シャツの襟元を広げて俺の首元に吸い付いた 。
「 …… 凛? 」
それから 、 顎を掴まれて触れ合うだけのキス 。
久しぶりに触れた凛の唇は冷たくて 、 それでいて柔らかい 。
凛 : 「 部外者はお前だよ 、 林 。 」
林 : 「 …… な 、 なんなの 。 あんたたち 、 ホモだったわけ!?気持ち悪い!!! 」
とんでもなく大きい声で叫んで 、 綺麗な顔を般若のように歪ませてから早歩きで帰っていった 。
俺はポカン 、 と呆けるしかなくて 、 林さんの後ろ姿をぼ〜っと見つめた 。
何が起こったのか分からない 。
頭の整理をしようと思ったけど 、 後ろから抱きしめられてそれも叶わない 。
「 あ 、 凛 …… あの 、 」
凛 : 「 よかった … 。 」
「 え?? 」
暖かい温もりの中で 、 じんわりと湿る肩 。
震えた声で俺の名前を呼ぶ凛が 、 とても愛しくて仕方なかった 。
グズっと鼻を啜る凛の腕を引いて 、 家の中に入った 。
相変わらず綺麗に整頓されている 。
二人でソファに並んで 、 俺は凛の肩に頭をちょこんと乗せた 。
「 凛 、 昨日はごめんなさい … 俺 、 嫉妬してて 。 何も聞きたくなくて 、 約束も破ったんだ 。 今日も 、 ごめんなさい 。 」
凛 : 「 …… 違ぇよ 。 俺がちゃんと話聞いてたら 、 こんなことにはならなかっただろ 。 」
「 …… あのさ 。 俺 、 凛のこと 、 」
涙で奪われていく視界 。
それが零れてしまう前に伝えようと口を開いたけど 、 凛の唇に塞がれて続きは出なかった 。
俺の手をすりすりと撫でて柔らかく微笑んだ凛は 、 ゆっくりと唇を開く 。
凛 : 「 彼方のことが好きだ 。 友達としてじゃなくて 、 ちゃんと 、 恋愛的に 。 だから 、 俺と恋人になって 。 」
「 ……… そんな 、 」
いつもより真剣で 、 それでいて柔らかい表情 。
ポロっと流れる涙は止まらずに 、 凛の手に落ちていく 。
俺は何度も頷いて 、 その気持ちに応えた 。
「 俺も 、 宮原が好きだぁ!! 」
凛 : 「 ふは 、 うるせぇよバーカ 。 」
子供のように泣いた俺を 、 凛はずっと抱きしめてくれた 。
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