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アルバム絵本
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「ワウーン、クゥーン、クゥーン」
あら、珍しいこともあるなぁ。
家から連れてきたキングは、緋色さんにすぐに懐いた。
キングは人見知りというか、警戒心が強い方で、初めての相手には、大抵威嚇する。
だけど、緋色さんにはすんなり懐いて、今は緋色さんの膝の上。
緋色「きっと、俺ん家で飼ってる雌犬の匂いに反応してるんだよ」
じゃれつくキングを緋色さんは微笑ましく撫でながら言った。
それを裏付けるように、キングはしきりに緋色さんの匂いを嗅いでる。
奏一「やれやれ、緋色は結局マキともキングとも仲良しになったのか…」
呆れ顔の奏一さんが修二と戻ってきた。
奏一さんは、緋色さんと向かい合う僕の隣に座って、僕の頭を優しく撫でる。
奏一「緋色はしつこいから、嫌なことは嫌だとハッキリ言っとかないとダメだよ。俺が言ってもこいつは聞かないから」
ため息まじりに困った顔。僕の頭を撫でる奏一さんの手は力強いけどスマートで細い。百目鬼さんのゴツい手と比べたら誰のだってそうだろうけど、奏一さんは昔特攻隊長しててめちゃめちゃ喧嘩強いのにそんなこと分からないくらい、優しい手をしてる。
百目鬼さんの手と違って、奏一さんの手は、いつもどこかくすぐったくて温かくて気持ちいい。
猫みたいに擦り寄りそうな気持ちでその優しさを心地よく受け入れていたら、緋色さんが奏一さんに笑いながら返す。
緋色「奏一さんが〝男なら突き通せ〟って教えを守ってるだけですよ」
ジェスチャーで絵筆を握りその場で描く素振りを見せ、奏一さんが絵を描く後押しをしてくれたと言った緋色さん。
だけど奏一さんは渋い顔をした。
奏一「だからって、嫌がる修二やマキに付きまとえって事じゃないぞ」
緋色「えー、やだぁー!そんな風に思ってたのぉー」
白々しくワザとおかま風に悲劇のヒロインになる緋色さんに、奏一さんがひと睨み効かせるけど、緋色さんはおちゃめに笑って返す。
緋色「ちゃんと、修二を〝脱がす〟の諦めてイメージ画で手を打ったじゃないですかぁー」
マキ「えっ、修二を脱がそうとしたの?」
緋色「ドン引きしないでよ、上半身だけ、上半身だけお願いしなんだけど、奏一さんの過保護が激しくってw」
笑う緋色さんに奏一さんは手に持っていた割り箸を彼の喉元に突き立てニッコリ冷ややかに笑う。
奏一「ダメに決まってんだろ」
緋色「やだぁー奏一さん、芸術作品のためだよぉ〜」
奏一「お前は作品を書く前に、対象物を手でベタベタ触るだろーが」
緋色「しょうがないじゃん、手で覚えてイメージに落とすんだから、やましい気持ちはこれっぽっちもないんですよー」
緋色さんは降参とばかりに両手を上げて弁解するが、酔って目の座った奏一さんは割り箸で緋色さんをベチベチ叩き出す。
そんな2人のやりとりを、修二が放っておきなって大人な対応。
修二「ごめんねぇマキ、緋色さんと兄貴はいつもこっからループだから。兄貴のことは谷崎さんに任せとけばいいから」
そう言って、筋肉ムキムキの谷崎さんって人に丸投げしてた。緋色さんと谷崎さんと奏一さんは朱雀の時からの知り合いで、どうやら一番近しい存在みたい。他の朱雀のメンバーが新年の挨拶に来たりしたけど、家に上がって長居してるのは、緋色さんと谷崎さんだけ。
僕は、挨拶しに来る人来る人の顔と名前を確認してたけど、来るのはみんな男の人ばかりで、僕の〝探してる人〟はいないみたいだった。
マキ「ねぇねぇ修二」
気になったので、こっそり修二に話しかけると、察しのいい修二は「なぁに?」って言いながら内緒話をして聞くように、そっと耳を近づけてくれた。
マキ「〝あやさん〟って人は来ないの?」
修二「!!??」
名前を聞いた途端、修二が仰け反って驚いた。
その反応からして、奏一さんにとって重要な人物なんだとすぐに分かった。
修二の動揺は手に取るようで、奏一さんに聞こえなかったかチラッと確認した後、聞こえてなかったと分かるとホッと息を吐いた後、あらためて緊張した顔で、僕にさっきより声をひそめて聞いてきた。
修二「…どうしてそんなこと聞くの?」
マキ「どんな人か会ってみたかったから」
修二「……なんで会いたいの?」
マキ「修二はなんで、会わせたくないって顔してんの?♪♪」
ニコッと微笑むと、修二は益々複雑な表情で頭を抱えた。
修二「…マキ…、頼む、その件には首突っ込まないで…」
心底嫌そうに…というか、戸惑って困惑してると言った感じの態度の修二。
でも、その態度は逆効果。
僕の中に、奏一さんの事でずっと引っかかってた謎があった。
僕は過去に一度、百目鬼さんと奏一さんの仲を疑ったことがある。それは、奏一さんが修二のセクシャリティーを受け入れようとしながら、同性愛そのものを受け入れようとしていたことがあったから。
最初は、修二のことを全部理解してあげたい気持ちがこんがらがってのことかと思ったけど、奏一さんは〝誰か男の人〟を受け入れようとしてるように見えた。だから、過去に修二の事で恨んでたけど、その前はとても仲良しだったという百目鬼さんの事で悩んでるのかと思ったんだけど…。
奏一さん本人が全否定
僕の勘違いだったことが分かった。
奏一さんは、僕と話をした後、何か吹っ切れたのか、あれからは特にそういった何かに悩んでる様子は見受けられなかったんだけど…。
奏一さんはモテるのに、彼女もいないし、いい感じの人もいなさげで、ずっと気になってたんだけど…
一度だけ、酔って潰れた奏一さんが『あやしゃん』と、呟いたのを聞いたことがある。
だから、気になる人でも出来たのかなって思ったんだけど…
僕の冴え渡る勘が、すべての答えを閃かせた。
修二のこの反応。
『あやしゃん』は、女の人じゃない…
マキ「ふーん…」
修二「うわぁ…、その顔、全然ノリノリで首突っ込むつもりでしょ!」
マキ「首は突っ込まないよ♪」
修二「いや、絶対突っ込むって顔してる!」
マキ「やぁん♪僕はバリネコだから突っ込まないの♪」
ちょっとした冗談なのに、修二の顔は赤面しちゃって可愛らしくなっちゃて、それをからかったら真っ赤になって怒った。
修二「ダメだからね!マキが出てきたらややこしくなっちゃうんだから!」
マキ「なんで?僕はややこしくしないよ、シンプルにするだけ♪♪」
修二「だ、だからシンプルにしちゃダメなんだってば!ややこしいんだから!」
マキ「どおして?奏一さんに幸せになってもらいたいだけだよ♪」
修二「そうだけど、マキが関わったら叶えちゃうじゃん!」
しどろもどろ小声でテンパる修二は見ていてとても楽しい。沈着冷静を心がける修二も、お兄さんの奏一さんのこととなると、弱いみたい。奏一さんも弟の修二大好き人間だから、お互い似てるんだなぁって改めて思ってホッコリしちゃう。
だけど修二は必死、ニコニコする僕をなんとか説得しようと身振り手振りが大きくなって、でもちゃんと小声。
修二「今回はダメだから」
マキ「何がダメなの?恋を叶えること?」
修二「兄貴は普通だから!」
マキ「何が普通なの?」
修二「兄貴は僕のせいでそっちの話は一切ダメだから!それに僕が家出て自立したし、もう直ぐ20歳になるからってやっと自分のこと考えてくれるようになって、最近はちゃんと仲良しの女性も出来たし」
マキ「仲良しの女性?でもまだ付き合ってないんでしょ」
修二「とにかく、どこからアヤさんのこと聞いたのか知らないけど、〝兄貴が受け入れる〟なんて無理だから」
〝受け入れる〟?
って事は…、奏一さんが『あやしゃん』を好きなんじゃなくて、『あや』さんが、奏一さんを好きだってことなのかな。
マキ「ふーん。〝あや〟さんは今回来ないの?僕会ってみたいなぁ♪♪」
修二「マキ…、全然僕の話聞いてないでしょ…」
マキ「聞いてる聞いてる♪♪、奏一さんに彼女ができそうなんでしょう♪」
修二「そう」
マキ「そんで、その〝あや〟さんが奏一さんに片思いしてるんでしょ♪♪」
修二「………………………。マキ…、頼むからその妖しい笑みでニヤニヤしないで…」
マキ「んふふ♪♪ハァーイ♪♪」
修二「…………」
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