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守らせてくれ
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電話で言われた場所に行くと
街の片隅にあるバーに辿り着いた
中に入ると氷崎の連れ達が俺を出迎え
ご丁寧に店の地下に案内してくれた
地下に着き扉を開けると
そこにはざっと30人程の不良が溜まっていた
店の中を飛び交う殺気が俺に集まる
よく見ると、ちらちらと見覚えのある奴もいた
中学の時に喧嘩した奴等か・・・
無駄に広い店の中にムサイ男が集まると
息が詰まりそうになるな
つか、煙草臭え・・・
「・・・忍」
中に入り、すぐに目についた忍に
もう大丈夫だと声を掛けると
忍は少し落ち着いた顔をした
前髪が短くなってたのは驚いたな
まぁ切ったのは氷崎だろうとすぐ分かった
けど、俺の許可無く忍に触って
おまけに忍の大事な髪を切るなんざ
くそ腹立つな・・・殴りてえ
「ちゃんと一人で来たかよ」
「あぁ。見ての通り俺一人だよ」
氷崎に会うのはこれで二回目。
中1の冬に、新と二人で潰したはずだった
「氷崎・・・」
いや、二人でじゃない
「あ?」
俺はこの男に負けた
やられそうになったところを
暴走した新が助けてくれた
あの時の新は普通じゃなかったけど
新のおかげで俺は助かった
・・・氷崎を潰したのは新だ
「お前、何を企んでる?」
「は?」
「目的はなんだ?」
「・・・・」
同期の鷹中の皆や、土屋と川下に忍・・・
ここまでの人を巻き込んでまで
こいつは俺に復讐する奴じゃねえ
お前に負けた俺なんかに興味は無いはずだ
あるとしたら・・・
「・・・新か」
「・・・・・・」
俺がそう言うと、氷崎は下を向いた
「ふっ」
そして、小刻みに肩を震わせ始めた
「ぎゃはははははっ!!!」
「・・・・?」
氷崎が吹き出して大声で笑い始めると
周りの奴らも同じように笑い始めた
「ははっ・・・あーあ」
氷崎は息を整えまた下を向いた
「そうだよ」
「!!」
そして睨みを効かせて俺を見てきた
その氷崎の目を見ると背筋がゾクっとした
「菅原、お前知らねえだろうけどよ。
俺渋谷に会ったんだわ」
「は?」
新に?
「正直ガッカリしたよ。
まさかあそこまで腑抜けになってるなんてよ」
「俺の前であいつを馬鹿にすんじゃねえ」
くそ・・・いつだ?
いつ会った?俺は聞いてねえぞ
「氷崎、あいつに何をした?」
新はここ最近目立った怪我はしてなかった
喧嘩も一回しかしてねえって言ってた
この男がただのお喋りをする為に
新と会うとは思えない
何をした?
俺が睨みを効かせると
氷崎はにやりと笑って口を開いた
「犯してやったんだよ」
「なっ・・・」
犯した?・・・新を?
「いくら殴ってもやり返して来なかったからよ」
「ふざけてんじゃねえぞ」
あいつがそんな事させる訳ねえだろ
「本当の事だ。俺の下でヒーヒー言ってたぜ?
なんなら本人に聞いてみろよ」
「っ、てめえ・・・」
あざ笑いながら喋る氷崎の話に
腹の底から怒りが湧いてくる
殴りかかろうと、一本踏み出した瞬間だった
「菅原ぁ。俺は渋谷を助けてぇんだよ」
「っ・・・は?」
その氷崎の言葉を聞くと
俺はピタリと足を止めた
・・・助ける?
何言ってんだこいつ
「俺はあの時のお前らが好きなんだよ。
なのに何だぁ?渋谷は優等生気取って
喧嘩の一つもしなくなったみてぇじゃねえか」
「・・・・」
「あいつを犯した時、助けに来た奴も
まじめ眼鏡君だったしよ。
あいつの隣はお前じゃなかったのかよ」
新の隣・・・
「お前も、何こんな地味男と連んでんだよ。」
「ひっ」
「忍!」
氷崎は忍の髪を掴んでそのまま忍を持ち上げた
忍はまた体を震わせ始め涙を流した
「汚ねえ手でそいつに触るな」
また氷崎に睨みを効かせると
氷崎はふっと笑って忍から手を離した
「あ、ああ秋人君っ」
大丈夫だ
絶対助けてやる
そう忍に笑ってみせると
体は震えてたけど忍はコクっと頷いた
「渋谷の目ぇ覚まさせてやるんだよ。
あいつはこっち側の人間だろ。
いつまでぬるま湯に浸かってんだって
ちゃんと教えてやりてぇんだわ。」
「・・・お前に新の何が分かる」
「分かるさ!あいつは俺達と同類だ!
だからこそ同士を助けてぇんだよ」
「・・・・」
その言葉を聞くと
俺は肩の力を一度抜いて深呼吸をした
「あいつに助けなんて必要ねえよ
仮にもし新自身が必要としてんのなら
助けるのはお前じゃねえ」
「は?」
あいつはちゃんとした道を歩いてんだ
喧嘩みてえなくだらねえ事から足洗って
俺達より一歩早く前に進んだんだ
「あいつを助けるのは、
今あいつの周りに居る奴らなんだよ」
昔トップだったあいつに
鷹中の連中はいっぱい助けられた
もちろん俺も
「氷崎、お前が何を考えてるか知らねえけど
新には指一本触れさせやしねえよ」
あいつは不良のくせに煙草や酒を毛嫌いし
その影響で連れの皆は煙草も酒もやめた
カツアゲだって鷹中の皆は一度たりともしなかった
けどそれは新が強かったからじゃない
トップの言葉で辞めたんじゃない
不器用なくせに
ムカつく程真っ直ぐなあいつの言葉に
俺達皆は心動かされたんだ
いつも新は俺達の一歩前を歩いてた
そんなあいつに鷹中の奴らは憧れ
あいつが不良をやめた今でさえも慕っている
俺はまだケジメつけれてねえまま
喧嘩に入り浸ってる
だけど、そんな俺にも
ちゃんと守りてぇもんが出来た
「忍」
「っ、は、はい・・・」
好きな奴に大事なダチ
その全部を今守れる
忍にはこんな思いをさせちまって
本当にもう嫌われるかもしれねえけど
全部終わったら、やっと忍と同じ場所に立てる
嫌われたとしても
またそこからやり直せばいい
「すぐ済むからよ。」
「えっあ、秋人君・・・」
「大丈夫だから。そんな顔すんな」
心配そうに俺を見る忍にまた笑ってみせた
忍から視線をズラし
俺は店の中央へと足を進めた
30人か。
忍がカツアゲされてた時の10倍居るな
「秋人さん!」
周りを見渡していると
店の片隅から土屋の声が聞こえた
目が合うと、土屋は下を向いて
すみませんと謝ってきた
そんな土屋を見て、俺は笑って声を掛けた
「土屋、任せてくれてありがとよ」
「え・・・」
あの電話の時から
お前は辛い思いしてたんだな
俺があの時気付いてやれてたら
お前はダチを売るような事をしなくてよかったはずだ
「お前は川下を助けろ。忍は俺が助ける」
「っ・・・」
気付いてやれなくて悪かった・・・
「ダチはダチに任せろ」
「・・・グズ・・・うっ、ス」
土屋は地面に顔を伏せてそう返事をした
そして、もう一度忍を見つめた
「秋人、君・・?」
忍のおっきな目が俺を映してる
出来れば、その綺麗な目には
今から起こる事は見せたくない
お前に俺のいいとこ見せたいけど
見せたいのは喧嘩をしてる俺じゃねえ
好きな奴の目の前で
拳振り上げて喧嘩なんてかっこ悪いだろ
忍の前で喧嘩は二度としたくなかった
だけど今は、今の俺に出来る全部で
お前を守らせてくれ
「・・・少しの間、目ぇ閉じてろ」
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