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盗み聞き
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心臓が破裂しそうな程バクバクいってる…
扉に向けた右耳から聞こえてくる会長と…巨人の声
別に盗み聞きをするつもりなんてなかったんだ。
だけど、生徒会室に忘れもんして…取りに来たら鍵が閉まってて…
教員室に鍵取りに行こうかなって思っていたら、中から物音が聞こえて…今の状態だ。
ごくりと唾を飲み、もう一度扉に耳をピタリと付けてみる。
やっぱり何だかゴソゴソと音が聞こえる…
『いっちゃん…っ』
巨人の声だ…なんか慌ててるような…
他にも何か話してるみたいだけど良く聞こえねえ…
つか今日も放課後、会長は巨人と勉強するから俺達を先に帰らしてくれたのかな?
いやでも、勉強するだけなら鍵閉める必要ねぇよな?
「…っ…」
何かこっちが変に緊張して来て唾液の分泌量半端ないんですけど…
眼鏡待たしてるし…早く戻らなくちゃいけねぇけど……
でも……会長とあの巨人……
『僕は君の事が知りたい。』
い、一体何をしているんだ…っ‼︎
「あーもう。だから彼には近付いちゃ駄目ですよって言ったのに。」
「⁉︎⁉︎⁉︎」
いきなり頭の上から声が聞こえて体がビクっと跳ねた。
「ぶちょ「シーッ!いいとこなんですから静かにして下さいっ」
口に手を持ってこられて軽く塞がれた。
完全に振り向いてみると、そこには口に人差し指当ててにっこり笑う部長さんが立っていた。
「い、いつからそこに…」
「ふふっ❤︎初めから居ましたよ❤︎」
「え…」
バチリとウインクを決めて、部長さんは俺の隣にしゃがみ込んだ。
初めから居たって……俺が来た時からって事か?
でもここは廊下だぞ?隠れるとこなんか無いのに…
「書記君。君が今ここに居るのは何故ですか?」
「?」
部長さんの声が少しだけ低くなった。
視線を向けると、目が合って、赤いメガネの向こう側には真剣な目つきをした部長さん…
「何故…って」
いつもはにこにこしてる優しい人だから、急に真剣な表情をされると少し緊張する。
「忘れ物を…取りに…」
部長さんの目は、俺の心まで見透そうとしてるような感じだった。
少し怖い。
「ふふっ❤︎そうですか。」
俺が答えると、いつもの部長さんに戻ってた。
何か、俺こんなに部長さんに対して緊張する奴だったかな?
「私は、会長に謝罪をしに来たんですよ。」
「謝罪?」
「はい。私が日野さんからの勉強を見てほしいというお願いを頑なに拒み、その役は結局会長が引き受けたとお聞きしましたので。」
「巨人が…部長さんに?」
「私は彼の事をあまりよろしく思っていません。苦手なんです。彼みたいなタイプの人は。ですがそれを会長に押し付けてしまったのは良くない事だと思い、こうして謝罪に来たのですが…」
部長さんは扉に耳を傾けた。
俺も同じように耳を傾けてみる。
『君の好きにしていいから。』
…⁉︎
会長のそのセリフがぼんやりと聞こえて来て、慌てて部長さんの方を見るとまたウインクをされた。
「ぶ、部長さ…中で、そのあの…」
「ふふっ❤︎ね?いいところでしょ?」
いいところじゃねえっ‼︎
中で一体何が起こっているんだっ
「…っ」
もう一度扉に耳を傾ける。
頼む。俺の良からぬ想像ということにしておいてくれ……
『…やめては無しな?』
!?!?
何を始めるつもりなんだっ‼︎
「っ部長さん…っ俺止めに行きますっ」
こんなの……絶対巨人にそそのかされて流されてるだけだっ
俺が止めてやらねえとっ‼︎
そう思い、扉をノックしようとした時だった。
「駄目ですよ。書記君。」
ノックしようとした手を部長さんに掴まれて、後ろへ引っ張られた。
「何すんですかっ…早く止めに入らないと」
「何故止めるんですか?」
「…な、何故って…」
それは、だって会長があいつに…
「………会長は、優しいから…あいつに利用されてるだけ…だから…」
そうなる前に…止めたい…
「ですが貴方には関係の無い事ですよね?」
「…っ…か、関係無いって…」
「関係ありませんよ。もちろん私も。」
部長さんの声と、扉の向こうから聞こえる会長とあいつの声が頭の中でぐるぐるする。
関係無いって言われたら、胸がズキズキした。
「会長はいつまでも貴方に定着している訳では無いんですよ。」
「……別にそんな事…」
そんな事分かってる…。
いつまでも俺の事を思ってくれるなんてそんな都合良く思ってないし、それに俺は会長には幸せになってほしい…。けど
「何も……あいつじゃなくたって…」
眼鏡が言ってたのはこれの事だったのか…?
だったら……尚更女が良かった。こうして扉の向こう側に居るのは
会長と女だったら…俺は別に止めたりしない。
「副会長を選んだのは貴方ですよ。」
「………」
「会長の幸せを願ってあげましょう。今は邪魔をする時じゃないです。それに相手が日野さんだと決まった訳ではありません。」
「…………」
部長さんがそう言った後、もう一度扉へと目をやった。
俺が選んだのは会長じゃなくて、眼鏡…
その選択に後悔なんてしてない。
でも、会長が心配でたまらないんだ…
「行きましょう。」
「……はい。」
色んな不安が胸に残る中、扉に背を向け、生徒会室から静かに離れた。
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