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octber 3.2015 邂逅-3
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「当たり、俊己で~す。充は約束をちゃんと覚えてたってことだ。」
「やく・・そく・・ですか。」
「祟りもしないし化けてでやしないから安心しな。そうはいってもこれ化けてでてる状況?」
俊己さんはカラカラ笑った。顔はあまり似ていないが雰囲気と口調がミネを感じさせる。あ、逆だ、ミネが俊己さんに似ているってことだ。
「今度の命日はわいわいやってくれって頼んだの。店のスタッフも増えて此処がとっても楽しい場所になりつつあるだろ?だからそれを感じたくてね。それに店にいれば充はどうしたってSABUROのことを考えっぱなしになるわけ。」
「考えっぱなし?」
「そ、俺はチャンネルを充に合せているわけ。充が考えたり思い出したりすることが俺にも見える。
テレビみたいなもんかな。SABUROって番組が見たいと思っても放映されてないと見れないだろ?ニュース見たくないのに見なくちゃいけないってやつよ。充の頭の中は色々ごちゃまぜだからCS並に多チャンネル。SABUROのキャッチアップとかしてほしいくらい。まあ、それが今なわけ。
充はいま全開SABURO状態だから、俺もここに来ることができた。」
「そう・・ですか。」
「そんなガチガチになるなよ。とはいえ普通はそうなるな。」
俊己さんは青いグラスを俺のジョッキに合わせた。ちゃんとカチン~と音がしたから、酔いつぶれてみている夢ではないし、1杯のジョッキで酔いつぶれるわけもない。
「サトルは・・・そうだな。俺達が選択しなかった道みたいに思えてずっと応援してきた。充も同じでずっと前から気にしていたんだぞ?サトルと飯塚が自覚する前からずっとね。だからホントによかった。
そしてここに来ることができるようになったわけだし、楽しい毎日が送れそうだとワクワクしておけばいい。
さっきみたいに落ち込むな、俺と充は住む世界が違ってしまったけど、サトルと飯塚にそれが来る心配をするより、他に悩むことがある。不安になった時は、別のことを考えろ。必ずその横に飯塚がいる。
心配するな。」
「俊己・・・さん。」
「実巳のケツをパンパン叩いてくれてありがとうな。実巳はやればできる子だから、うまいことやってくれよ。
スパンキング王になってよし、俺が認める。」
「ぶっ!そういうこというとミネと話しているみたいですよ。」
「だろだろ?だから俺、実巳がかわいいわけよ。
だから実巳が迷った時は導いてやってくれ。あいつなりに成長しているが、なにせ経験値の大部分が厨房だからさ。充がついていれば大丈夫だって思ってたけど、同年代だからこそできることが沢山あるし。
オッサンになっちまったからな~充。」
俊己さんはそう言って両手を目の前にして自分の手の甲を見詰めた。
「充の手は俺のと違って、男の手って感じになっている。歳を重ねるその意味をしらないまま俺はこっちにきちゃったから、ちょっと心配。振られちゃうかも。」
「振られる?」
「そ、俺から聞いたってのは内緒だぞ。次の代は充を俺にくれってプロポーズしたの。だから充は残りの人生を生きて楽しみ、なおかつ死ぬのも楽しみになったってわけだ。」
「次・・・。」
「そ、だからね心配しても意味がないわけ。強く望めば叶わないことはない。たとえ時期がずれたとしても、どちらかが待って、相手を待たせて次の時代を生きる。わかった?」
「・・・はい。」
「このグラス、充が買ってくれたんだろ?」
「そうみたいですね。」
「俺の好きな色、好きな花。この二つが揃うと俺は充の中に潜ることができるんだ。
昔の俺が生きていた頃の記憶の中にね。記憶を少しだけかき混ぜると泡立つ。脳はその記憶を整理するために夢を見せる。だから俺はその時だけ、充と夢の中で逢えるんだ。なかなかロマンチックな逢瀬だろ?」
勝手に涙がでてきて止まらない。ボタボタ零れ落ちて止まらない・・・止まらない。
「サトル、ごめんな。俺の・・・がそっちにいっちゃって。」
「構い・・・ま・・せん。泣きたければいつもで俺を使えばいい。いくらでも貸します。」
「ありがと。」
「あと充に言っておいてくれる?グラスを動かすか割るってのは止めにしたって。こんなきれいなグラス、割るわけにいかないから。」
俊己さんは目の前からふっと消えた。
でも俺の涙は零れ続けている、きっとまだ・・・ここに居る。
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