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コイツは似ていた 【忌子視点】
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「……混乱していて、よく分かりません」
「だろうな」
空色の髪の少年は俺にしがみついていた。忌子の俺の側に居ても、安心する奴なんているんだな
俺にかけられた着物を嫌がる事なく、逆にくるまっている。何だこれ、小動物か。
「この山は、冬なんですね」
「いつでも冬だよ。春が来ねえんだ」
「え?」
少年……黒子でいいか。黒子はキョトンとして俺を見た。
「え、じゃあ桜が咲かないんですか?」
「咲かねえな」
「緑いっぱいにならないんですか?」
「葉っぱが生い茂ってんのは見たことねえよ」
「……そんな中に、一人いたんですか」
「ああ」
また泣きそうな顔をする黒子。だから何でお前が泣くんだよ。埋めんぞ。
「……宮地さん、ここを出ませんか?」
「は?」
いきなりの事で、俺もびっくりした。何を言い出すんだコイツは。
そういや、前に同じ様な事言われた事あったっけな
「だって、こんな所に一人きりなんて、さみしいじゃないですか」
一言一句、あの鬼と一緒だってことにちょっと驚いた。
コイツと同じ名前を持つ誠凛集落の鬼の長。
アイツも、ここに来なくなる前日俺に言った。
「もう、僕達はここに来れなくなります」
「は?え、何で……」
「仲間を……一族を、裏切る事にしたんです。誠凛集落の全員で」
「ちょ……!」
あの時の長は優しげな目で俺を見ていた。
そんな、長が何で一族を裏切るのか。俺の両親みたいに。
止めたくて、口を開こうとしたらあの人の口から出たのは
「清志くん、君も僕達と来ませんか?一緒に
ここを、出ませんか?」
俺を、ここから、この隔離された山から出そうという誘いだった。
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