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勿忘草
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新年になって1ヶ月、
寒さもかなり本格的になってきた冬の夜
駅のホームに急ぎ足で向かっていたら
目の先にいる愛しい人の声が聞こえてきた
「直輝! お疲れ様っ!」
「悪い待たせて」
駅のホーム
仕事終わりの俺を待ってくれていた祥をギュッと抱きしめる
直ぐに離せって暴れてたけど、でも構わずに腕の中に閉じ込めたまま額にキスをした
祥がパリから帰ってきてから今日まで
すれ違いが多くてなかなかこうやって会うことが出来なかったから
この体温も抱きしめた時のフィット感も久しぶりで心がホッとしたせいもあって周りなんて目に入らなかった
「っ!」
「ふふっ祥顔真っ赤」
「な、おき……バカ…」
むぅっとした祥がチラッと上目遣いで睨みあげてくる
その表情が俺は堪らなく好きで、
仕方ないなって祥が許してくれるのが好きで
だからもっともっと祥には意地悪したくなる
「帰ろうか」
「うん、コンビニ寄らない?」
「いいよ何買うの?」
「んー、たまにはお酒とか!」
「また酔っ払って好き好き言うの?」
「なっ?! そ、そんなに飲まないし言ってない!」
夜もふけて誰もいない道を手を繋いで歩く
もう冬も本格的にやってきた張り詰めるような冷え込む空気の中で、祥の隣だけはいつも暖かい
繋いだ祥の手が冷えないように俺のポッケの中に入れるとじんわりと熱が広がった
本当に暖かい
陽だまりみたいな笑顔も優しい目元も
全部全部好きで嫌いな所さえも好きで
結局嘘なしで祥の全てが好きなんだ
「祥」
「なあーに」
「好きだよ」
「ッ?!」
「ふはっ、可愛いなぁ〜」
堪らなくなって好きだって口にすれば
慣れる様子も一切ないくらい
顔を真っ赤にして照れる祥がいて
意地悪で俺が好きって言ってるとか
祥は思ってるけど
それだけじゃなくて、本当にただ祥の温もりが隣にあるだけいつもいつも好きだって気持が強くなる
だから口にして伝えるけど
案の定祥は恥ずかしいせいでむぅっとしてて
拗ねてとんがっている唇にチュッとキスをしたら尚のこと顔が真っ赤になっていた
「もう直輝っ! 外でキスするの禁止!」
「なんで?」
「直ぐに好き好き言うのも!」
「やーだ」
「やだじゃない!」
プンプン怒っている祥を見てケラケラ笑うのが幸せで堪らない
こうやってからかって怒られて
もっとからかって涙目になる祥と口喧嘩するのも久しぶり過ぎて
それだけで胸が熱くなった
コンビニに着くと
定番のようにスルメとオレンジジュースを買う
オヤジくさいよな、なんて言うけど
二人揃って当たり前に手に取るから笑えてくる
それから適当に他のおつまみとお酒を買うとコンビニを出て家へと帰った
「ただいま」
「お帰り」
「祥もお帰り」
「ふふっ、ただいま直輝」
一緒に帰ってきて
そんなふうにただいまを言い合って笑って
どちらからともなくキスをする
寒い外にいたせいか祥の鼻が赤くなっていた
暖房を付けると、夕飯の支度をしようとしている祥をなし崩しにリビングへと誘導することにした
「祥〜」
「先にご飯の支度してからな」
「ダメこっち来て一緒にイチャイチャしよ?」
「なっ?! だ、ダメだって…あっ」
キッチンに立つ祥を後ろから抱きしめると祥が口を結ぶ
顔を覗き込むと目が合って、そのまま真っ赤な唇にキスをした
「祥向こう行こ?」
「………」
「俺も後で夕飯の手伝いするから」
「……本当に手伝えよ」
「するする」
二人でリビングに戻るとソファに座りこむ
黙って隣に座る祥の手を引っ張ると顎で下を指した
そこじゃなくてここだろ、って言ったらおずおずと足のあいだに座り込んでくれる
何だかんだ言いながらも
甘えてくれるのが可愛い
「祥〜」
「甘えん坊」
「祥だってそうだろ? 俺から言わなきゃ言えなくて一人でもじもじしてる癖に」
「っし、してない!」
「嘘つけ」
後ろから腰に手を回してギュッと抱き寄せる
祥のふわふわな黒髪が顔を撫でてくすぐったい
「祥いい匂い」
「何もつけてないよ?」
「うん、でもいい匂い」
香水とかつけてないけど祥はいつも花みたいないい匂いがしていた
そのまま抱きしめてる間に祥がテキパキと袋から出してくれる
買ってきたお酒とかおつまみを広げると
久しぶりに二人で乾杯をした
大体いつも家でダラダラしてるけど
それが緩くて好きだ
それに家なら祥も人目とか気にしないから
少しだけ素直だし
「祥ー」
「なに?」
「キスしてよ」
「〜〜っ?!」
チビチビとお酒を飲んでいる祥の顔を後ろから覗き混んでほっぺに噛み付く
俺の言葉を聞いた途端に真っ赤な色に顔を染める祥が愛しくて堪らない
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