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伝えぬ想いは掌に還る
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夢と現を彷徨う様な感覚の中、ほのかな愉悦が走る。
誰かに首元を愛撫されているかのように撫でられ、啄まれ、俺は緩んだ口元から熱く呼気を吐いた。
「か……がり、さ……?」
擽るような、まるで羽の様に触れてくる手つきに違和感を覚え身をよじりながら耀さんに訴える。
そんなのじゃあ、足りないんだ。
もっと、もっと激しくて、強くなきゃ渇きは鎮まらない。俺が怒ってるの知ってるなら、ちゃんと求めて欲しい。俺と同じくらい我侭になるほど子供のように求めて欲しいんだ。
「か、がりさん……っ」
けれど幾ら願おうとも、回らない舌は言葉を発せない。
焦燥にも似た苛立ちに、未だ優しく触れてくる愛撫を止めさせる為泥沼のような気だるさから瞼を開くと、そこに広がる現状に冷水を浴びせられた様に思考が停止した。
「な、ッにして、祥!」
「……?」
てっきり酔い潰れた祥は直くんが。
眠る俺には耀さんが。
そうやって在るべき場所へと戻り、眠る間に事は運ばれていたと思っていたが俺の上に跨っていたのは未だ酔っている祥であった。
「ちょっと、祥退いて。これは冗談抜きで俺の命に関わるんだけど」
ヒヤリとしたものが背筋をはしる。
さっきまでの緩い熱もすっかりと飛んでいき、この現場を抑えられたらと思うと冷や汗が止まらない。
俺もだけど、悪いが祥だってただじゃあ済まないんじゃないか。
直くんがどんなことを仕出かすかは分からないけど、簡易に想像つく未来にゾッとして祥をひっくり返そうとした時だった。
「逃げちゃ駄目だよ」
にっこりと妖艶な笑みを浮かべ、有り得ないほどの握力を持ち祥に抑えつけられたのは。
「祥……!」
「怖いの直輝?」
「いや、待ってよ。俺は直くんじゃなくて、ッ、ちょっと!」
熱で潤んだたれ目がうっとりと色気を放つ。
長く束のような濃い睫毛に縁どられた黒い瞳に魅入られそうになり慌てて目を逸らすと、顕になった首筋を熱い舌が這い上がった。
「っ、ン」
「可愛い……! なお、きもちぃ?」
「しょ、う、やめろってばぁ……っ」
「いつも、俺ばっかりきもちよくなってるから、今日は沢山してあげるね」
いやいやいや、迷惑だから……!
天使のように微笑んだその動作がまるで悪魔のようだ。
上気した真っ白な頬がふっくらとあがり、目元にはえる泣きぼくろが相まって色気を溢れ出させる。
普段の清廉とした健気な姿が夜にはこうも変わってしまうのかと冷静に驚き、逃げ出す算段を立てる一方ではこのまま流されてしまうのもいいかもしれないと思っていた。
祥には悪いけど、最後までしなければいいんじゃないかな。
そのぐらいすれば、あの耀さんだって少しは俺に、さ……。
「なお、こっち向いて?」
意識が他所を向いていた事に不安を覚えたのか、祥が尋ねる。
「気持ちよくない? 俺のこと好き?」
真っ直ぐな言葉とは裏腹に、迷いと不安を孕んだ瞳。
そんな祥の姿を見て、言い知れぬ不快感が湧き上がった。
あんなにも愛されているのに、それでも祥は直くんの愛を疑うのだろうか。
傍目から見ていて、その違いに苦しくなるほどに、愛されているのに。そんな祥でさえ愛されているか思われているか胸を痛めなければならないのか。
人を好きでいると言うことは、永遠にその痛みと隣合わせでいる事ならば、やっぱり俺には向いてない。
ずっと、痛いのなんて嫌に決まってる。
なのに何故、好きでいるのか。嫌なら切ってしまえばいいのに。
そうすればきっと、この焼けるような嫉妬もどこかへ消えてしまう筈なのに。
「なお?」
「……愛されたい」
ポツリと零れた本音に、自分が一番驚愕した。
けれど驚きに心を割く暇もなく、俺の呟きを拾ってしまった祥が瞠目し、途端に慈愛に満ちた瞳で笑いかける。
ああ、そう。俺はこの笑顔が好きだった。4年、5年、それよりも昔からこの笑顔に愛されたいと思っていた。
この祥に愛される直くんが羨ましい。祥に愛されれば、不安なんて感じないんじゃないだろうか。
あんな、雑な親父よりもうんと。
「あ……っ」
グルグルと終わらない自己嫌悪と我侭の濁流にのまれた意識が引き戻される。
薄い胸を撫でていた手のひらがやんわりとそこを揉みあげる動きに腰へ熱が湧く。
ぶるりと震えた俺が嫌悪ではなく快楽を拾ったことに目敏く気づいた祥は、赤い舌で唇を舐めると浴衣の合わせを左右に開いた。
「……勃ってる」
「……。あんまりそういう事口にしないで欲しいんだけど」
「なんで? どうして勃ってるの?」
「だから、恥ずかしいから言うなって──ッあぁ」
暴かれた肌を照明が照らす。
弄られもせず、ただ胸を揉みしだかれただけで次の愉悦に期待しぷっくりと勃ちあがった乳首をなんということか、迷いもなく祥が口に含んだ。
ギョッとし身をよじるよりも、快楽に戦慄き身を跳ねたという方が正しい。
祥はと言えば、俺を未だ直くんだと勘違いしているようで。その直くんの乳首が女のように機能している事実に腹を立てているようだ。
俺の想像したものでは無い証拠に、
「誰に弄らせたのっ!」
なんて膨れながらガミガミと歯を立ててくるんだけど、それ絶対跡に残る。
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