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声が聞きたい
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ヤキモチに押しつぶされそうになった、日曜日の夜。
雅治さんから、着信があった。
「も、もしもし!」
『ふっ…元気そうだね?今、電話してよかった?』
「もちろんです!」
うわ…半月ぶりぐらいに聞く、雅治さんの声だ。
ドキドキする。
『……』
あれ?沈黙?
『…ねぇ。なんか、喋って?』
「…えっ?」
用事があるから電話かけてきたんじゃないの?
『あー…ごめん。声聞きたくてかけただけ。特に用はないよ』
「え⁈…フフッ!なんですか、それ」
ひゃー!
声が聞きたいとか、超照れるんですけどっ?
顔、熱い!
「あ、えーと…仕事、まだ忙しいですか?…体調は大丈夫ですか?」
『ん。仕事は相変わらず立て込んでるけど、今回は新人も一緒だから無理はさせられないし…寝る時間はちゃんと確保出来てるよ。食事も取れてるし、元気だよ』
「食事…って…その、新人の子と一緒だったりするんですか?」
って俺、何を聞いてんだよ⁈
ヤキモチ妬いてるのバレバレじゃん…
『あぁ…昼は一緒だけど、夜は別だよ?…もちろん、朝もね』
「えっ…と、そ、そうですか。はは…」
『…気にしてる?新人のこと』
「う…まあ…なんというか…雅治さんとずっと一緒にいると思うと…やっぱり、その…」
『フッ……一緒って言っても、仕事してるだけだから。心配するようなことは何一つないよ?』
「はい…」
分かってるけど、モヤモヤするんだよ…
『あぁ…でも、陸の気持ち、分からなくもないな』
「え?」
『もし、俺が陸の立場なら、間違いなくヤキモチ妬くだろうね。…例え仕事だけだとしても、陸のそばにずっと誰かがいるのは、良い気がしない』
うわ…
雅治さんも、そういう事でヤキモチ妬いてくれるんだ。
なんか嬉しい。
『陸?』
「え?あ、はい。…あ!僕、今S電機の仕事してるんですよ」
『あー…。それ、俺が窓口対応するかも』
「そうなんですか?」
やった!
つまり、納品作業は一緒?
もしかしたら…九州への出張も⁈
『うん。九州での組み込み作業も入ってたよな?…確か、松井の教育で…あー、松井って新人のことだけど。そのジョブで現場対応を教える予定になってた気がするから』
「まつい…さん…」
やっぱり。
メールに出てた名前は、その新人だったんだ。
そっか…クリスマス、一緒に仕事が出来たとしても、その新人も一緒かぁ。
「あの…どんな子なんですか?」
『そうだな…仕事は真面目だけど…とにかく若い…』
「若い、ですか?」
『そう。…元気いっぱいな感じで、ちょっとついていけない時があるよ。疲れる』
そう言って、ははっと掠れたような笑いを漏らした。
「なんか、大変そうですね」
『ん。…早く陸に会って、癒されたい…』
「…僕も………です」
今度は、嬉しそうな笑いを漏らした雅治さんが「ふわぁ」とあくびをするのが聞こえた。
「あの…疲れてますよね?早く寝た方がいいんじゃないですか?」
『んー…。ごめん。横になって陸の声聞いてたら…眠くなった』
「あの、疲れてるのに、電話ありがとうございました。話せて嬉しかったです」
『俺も。なかなか連絡出来なくてごめん。また時間が出来たら電話するから…』
「はい。無理しないでくださいね?…じゃ、おやすみなさい」
『ん。おやすみ…』
通話の切れたスマホをしばらく幸せな気持ちで眺める。
モヤモヤは、少しどこかへ行った。
今度の仕事も、雅治さんと一緒かぁ…
よし!頑張らないと!
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