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sideアキ: 似た者同士
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「……よぉ。」
「ひ、さしぶり…、」
ゆっくりと佐古が椅子に座った
(黒髪……やっぱり見慣れない、な。)
赤くない佐古とか違和感の塊なんだが…
(ん、ってかもう髪赤くないんじゃ佐古用に買った食器ももう似合わない?)
あのチューリップ折角買ったのに!エプロンも!!
(…ってか、佐古のこと〝佐古〟って呼んでいいのかな?)
確か小鳥遊の屋敷では「俺はもう佐古じゃねぇ。」って言ってた気が……
本名は、えぇっと…Taylorさん?Richardsonさん? ん、どっちで呼べばいいんだ…?
「何百面相してやがる。」
「ぁ、いやっ、えぇっと……、」
「…あぁ、俺のことは〝佐古〟でいいから。」
「え?」
「今更変えんのだりぃだろ。別に佐古って名字が嫌いな訳じゃねぇ。学校でもそう言ってる。」
「そう、なんだ……、」
「はぁぁ…ったく、たかが名字が変わっただけでガラリと態度が変わりやがって……意味わかんねぇんだよ。」
「あはは…」
(いや、お前の場合は特殊すぎるだろ。)
だってあの有名なT.Richardsonだぞ?
そりゃあんな学園じゃ考えることはみんな一緒だろ
(きっと追いかけられまくってんだろうな。)
学校内で安息の地はA組のクラスくらいなんじゃ…?
「おい。」
「? 何?」
「〝ハル〟としてじゃなく〝お前〟として喋れ。
お前は、どうして初めて出会った時俺に話しかけた?」
真っ直ぐにこちらを見て、佐古が問いかけてきた
(〝ハル〟としてじゃなく、〝俺〟として……、)
一度大きくまばたきをして、息を吐いてゆっくり口を開く
「出会った時の佐古が、〝俺〟と似てたから…かな。」
(そう、それが始まりだった。)
あの時の佐古は、家族から蔑ろにされて縁を切った状態だった
学園とも馴染めずいつも外へ行っていて。
あの一匹狼のような雰囲気…多分、ハルがいなかったら俺もあぁなってたんだと思う
俺にはハルがいた
だから俺は俺を保つことができてーーー
「きっとハルがいなかったら、俺も同じようになってたんじゃないかって思って。
その時に、佐古にとっての〝ハル〟が、俺にとってのハルみたいな存在になればいいのになって…考えて……」
「お前にとってのハル、ねぇ…」
「ただの勝手な押し付けだよなっ、俺のエゴだったんだ。
でも、どうしてもお前を1人にはしたくなくて……1人が寂しいのは、知ってるから…」
本当に、もう嫌という程知ってる
自分という存在はいらないんじゃないかって…心臓がヒヤリと冷えるあの感覚
そしてそれに陥る度、助けてくれたのはいつだってハルだった
「だから、どうしてもお前をその感覚の中に放っておきたくなかった。そこから引っ張り出してやりたかったんだ。そんな存在に、なれたらいいなって……っ、」
(本当、随分勝手なエゴだな。)
今までやってきた事に対して急に自信が無くなって、キュゥッと膝の上で拳を握る
「………あぁ、お前の言い分は分かった。それでお前はあんなに俺にひつこく絡んできたのか。」
「っ、うん…
あの、佐古っ。俺ーーー」
「だが間違えんな。俺はハルに助けられたんじゃねぇ。
お前に助けられたんだ、〝アキ〟。」
「ぇ……?」
「はぁぁ…」と息を吐きながら、佐古が背もたれにもたれかかる
「思えば最初から変だと思ってたんだよ。初めての外にしちゃ出来過ぎだというくらい上手く事が進みすぎていた、まるで誰かに操られてるみてぇに。
まぁ、現に〝ハル〟を操ってたのはお前だったしな。」
佐古は、鋭い。
(そういえばレイヤに襲われかけた時も聞かれたよなぁ。)
「結局いい具合にはぐらかされて俺も違和感をそのままにしてたが、結局はこうだったとはなぁ……気づかなかったわ。」
「いや、気づくなんて流石に無理だよ。」
だって俺の存在はみんなには知られていなかった
それなのに俺に気づくなんて、そんなの100%無理だ。
「あぁそうだなぁ。だがアキ、俺は惜しいとこまでいってたと思うぞ。」
「っ、クスッ、そうかもな。」
(あぁもう、負けず嫌いなのかなんなのか…)
ニヤリと佐古が笑う
「まぁ、要するに俺を1人の世界から引っ張り出したのはハルじゃねぇ、お前だ。
今日はそれを言いに来た。」
「っ、」
「お前にとってのハルという存在は、
俺にとってのアキ…お前だ。」
「そ、かぁ……っ。
なぁ、もう1人じゃないの?」
「あぁちげぇな。丸雛や矢野元やお前や…クラスの奴らも、もういっぱいいる。外の連中だって。
それに、家族も。」
「ふふ、和解したんだ?」
「あぁお陰様でな。互いに話をして、もう今はなんもねぇ。」
「そ、かぁ…良かった。
……ぁの、このタイミングの和解って、もしかして、」
「いや、別にお前の所為ではねぇ。
んー…いや、お前の事も多少はあったんだが、大半は俺の理由だ。
だから気にすんな。」
「っ、ありがと……」
「ははっ、何でお前が言うんだよ。ちげぇだろ、それは俺の台詞だ。
ーーー有難うな、アキ。」
「ーーーーーっ、佐古…、 〜〜〜っ、」
「ぁ、お、おい泣くなって、」
(無理、無理だろ……っ。)
ぼろぼろ涙が出てきて、止まんない
(あの寂しい背中の佐古は、もういない。)
冷たい瞳も、誰も寄せ付けないようなあの雰囲気も…もう何処にもない
それが……ただただ 嬉しい。
「っ、良かった、!」
(本当に、良かった…)
ーーーもう、佐古は佐古じゃなくなった。
笑いながら泣く俺にオロオロしながら不器用に背中を撫でてくれる手が嬉しくて、もっと涙が出てきてしまって
しばらくそのまま泣いてしまった
「じゃ、俺もそろそろ帰るわ。」
「うんっ、ハルのことよろしくな。」
「おぉ。」
あれからもう少し話をして、夕方になる頃佐古が席を立った
「俺のこと〝佐古〟って呼んでたのかよてめぇ。」と笑われて、俺も俺でちゃんと素で話せて(「黒髪のお前見慣れなさすぎて違和感の塊なんだけど?」って言ったら「うっせぇな、早く慣れやがれ」って苦笑された)
互いに、何となくもう打ち解けたような雰囲気になれて。
「あ、そうだ。」
ドアに向かう足がピタリと止まる
「お前に言っとかなきゃいけねぇ事があったんだ。」
「? なに?」
「まだ誰にも言ってねぇけど、俺ーーー」
「ーーーーーえ、?」
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