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「あの時、死ぬべきだったのは俺なんだ。
俺はお前から兄貴と幸せを奪った。
お前を1人にしたのは俺なんだよ」
リカちゃんは俺を見ない。
その手が白くなるほどにキツく、固く握り締められている。
「それなのに俺はお前に近づいてお前に触れてしまった。
お前が俺を見るたびに、その目がいつか俺を蔑むんじゃないかと思った。
俺の手を握ってくれるお前の手が、俺を突き放す日が来る。それが怖くて怖くて仕方なかった」
いつも余裕で、俺よりも大人で、意地悪で俺をからかってばかりだったリカちゃん。
それが今、目の前で俺に嫌われたくないと…捨てないでくれと震えている。
「いっそ目の前から消えろと言ってほしい。
もう顔も見たくないって、そう言われれば俺はすぐにでもお前の前から消える」
「俺はお前に許されたいんじゃない。責められたい。
あの事故の後、誰も俺を責めなかった。
お前の家族も桃も豊も…誰1人として俺を責めなかった。
……それが、1番辛かった」
リカちゃん。
自分を責めて、自分で自分が許せないリカちゃん。
こんなにも優しくて、こんなにも自分に厳しくて
こんなにも悲しい人を俺は知らない。
「慧…俺を許さないで。お前なんて嫌いだと言って」
そうやって1人になろうとする。
全部自分の所為にして、全部自分で抱え込もうとする。
この人を救えるのは俺しかいない。
「リカちゃん」
リカちゃんの顔が上がり俺を見る。
困惑し、切なく眉を寄せたその表情に今すぐにでも手を伸ばしたくなる。
「ありがとう」
俺はもう一度…笑顔で告げる。
「リカちゃん、ありがとう」
「……慧?」
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