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久しぶりの実家。最後にこの玄関のドアに触れたのは、もう何ヶ月も前の話。
久しぶりに歩く廊下に久しぶりに座るソファー。
出された紅茶は明らかに客用のそれで、居心地は最悪だ。
俺が家を出た時と変わらないリビング。
家になんか全く興味の無い父さんらしい…というよりもあの人が興味があるのは仕事だけ。
息子の俺にすら、この数ヶ月何の連絡も無いんだから。
ソファーに座って待たされること数十分後。
ちゃんと今日帰ることを連絡したのに、この扱いはどうなんだよ…。
イライラが募り、無意識にテーブルを指で叩いているとやっと扉が開いた。
「遅くなって悪いな」
「恒兄ちゃん」
現れたのは父さんじゃなく次男の恒二…恒兄ちゃんだった。この暑い中スーツを崩さず着ている真面目さは変わらない。
恒兄ちゃんは俺をチラッと見た後、向かいのソファーに座る。
「しばらく見ない間に縮んだか?」
「そんなわけあるか」
その後しばらく続く沈黙。
星兄ちゃんと違い、恒兄ちゃんと俺はあまり話したことがない。
9歳上の恒兄ちゃんはいつも習い事や予備校で家にいなかった。
小さい頃の俺は星兄ちゃんにベッタリだったし、恒兄ちゃんは高校卒業と共にアメリカの大学へ行ってしまったから余計にだ。
恒兄ちゃんがやっと日本に帰ってきた時には俺はもう受験生で、高校入学と共に家を出された。
だから恒兄ちゃんと俺は兄弟というにはとても遠い。
「学校はちゃんと行ってる?」
「まぁね」
「…………そうか」
また沈黙。
そろそろ息苦しくなってきた時、恒兄ちゃんが立ち上がった。
「仕事に戻るよ。夜には社長も連れて来るから」
「連れて?」
「今はずっと会社近くのホテル住まいなんだ」
言うだけ言って恒兄ちゃんは出て行く。
残されたのは俺と冷め切った紅茶。
やっぱり俺は“お客さん”だった。
俺の居場所はここに無いんだと来て数時間もせずに突きつけられる。
震えることのないスマホ。何の通知も来てない画面。
1人きりの3日間が始まる。
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