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仕事を終えたあたしは、約束の場所へと急ぎ足で向かった。 いつもの場所には既に歩ちゃんの姿がある。
ぼうっと空を見上げながら紫煙を吐き出す横顔。何も映していなかった黒い瞳があたしを捉え少しだけ細まる。
「お疲れさま」
やだ素敵…心の中ではそう思いながらも、あたしは手を振るだけの返事をした。
備え付けてある灰皿にタバコを捨てた歩ちゃんがゆっくり歩いてくる。
「大先生は今日もバッチリ仕事してきたんすか?」
「当たり前じゃない」
本当は鞄の中に目を通すべき資料が詰まっている。きっと今日は明け方まで眠れないだろう。
でもそれを言うのはあたしのプライドが許さない。
「さすが桃さん」
少しだけ高い位置にある歩ちゃんの顔。何の手入れもしてないのに綺麗なお肌が羨ましい。とはいってもまだ10代なのだから当たり前。
やっぱり一回り近く歳が違うと大きく変わってくる。
そう、たとえばこういう時。
「歩ちゃんは何食べたい?」
「ラーメン」
「ラ…それ前も食べたわよね?たまには違うのどう?」
「じゃあ焼きそば」
出てくるのは麺類ばかり。せめてパスタにしてくれたらいいものの、ガッツリ系を好む歩ちゃんの口からは重たい食べ物ばかり上げられる。
朝から働き詰めで疲れ切った身体には正直キツイ。
「じゃあ…おうどんにしましょう!
あたしイイお店知ってるの!」
「うどんならラーメンでも良くないですか?」
察せよクソガキ。こっちはダイエットもしてんだよ。
「いいわ……ラーメン行きましょう。歩ちゃんのおすすめのお店連れて行って」
結局また今日も自分が折れてしまう。
「マジですか?んじゃどこ行くかな」
嬉しそうに笑ってお店を考え始める歩ちゃん。こういうところが憎めないから、つい甘やかしてしまう。
目星を付けたらしい歩ちゃんがあたしに向かって手を差し出す。
「なに?」
「鞄。重たそうだから1つ持ちます」
「いいわよ。これぐらい自分で持てるわ」
「これぐらいってんなら持たせてくれてもいいでしょ」
あたしの返事など聞く気もない彼は強引に奪って行ってしまう。しかも、どうみても重たそうな大きい方の鞄を。
書類やファイルが詰まっていて重たいだろうに平然といているその姿。
「……悔しいけどイケメン」
「なんか言いました?ってかボケっとしてないで早く来てくださいよ」
こうして年下の恋人は今日もあたしを魅了する。
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