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「よくもまあ実の父親を躊躇いもなく殴れるもんだな…親の顔が見てみたいよ」
「それなら今すぐ鏡見て来いよ。研究オタクの変態が見れるから」
リカちゃんに叩かれた頭を摩りながら、そのおじさんはため息をつく。
この人がリカちゃんのお父さん…ってことは歩のお父さんでもある。雰囲気はどちらかというとリカちゃんに似てるような、でも顔は歩の方が似てるような気もする。
「本当に見境無いのな。歩と同い年だぞ、コイツ」
リカちゃんの言葉におじさんが頷いた。
「歩と?なるほど…その未完成な中に秘められた色気に私の中の雄が反応してしまったのかもしれない。これは是非検証してみなければ」
また俺に触ろうとしたおじさんの手をリカちゃんが今度は跳ね除けた。
「触るな。変態が移る」
後ろに隠れていた俺を抱き寄せたリカちゃんが自分の着ていたコートの中に俺を隠す。すっぽり入り込んだその中は暖かくて甘い匂いがして、俺は思わずリカちゃんにぎゅっとしがみついてしまった。
リカちゃんが俺のつむじにキスを落とす。
「こいつは俺の。うちの慧君に手出したら容赦しないって言ったよな?」
「見せつけてくれるじゃないか。てっきりうちをホテル代わりにする気かと思ったのに」
「誰がそんな事するかよ…あんたの頭の中にはそれとばい菌しか無いのか」
俺を置いて交わされる会話は親子の会話にしては変だけど。それでも少しだけ幼くなったリカちゃんの雰囲気に、この人は本当にお父さんなんだなと思った。
リカちゃんに咎められたおじさんが、渋い顔をして眉間を押さえた。
「ばい菌じゃなくて細菌なんだけどな…お前の中にも何億もあって、それぞれが重大な役割を担ってるのに。そうだ今度うちのラボにお「行かない」…………だろうな。そういうところは母さんそっくりだよ」
リカちゃんのお父さんはよく喋る。リカちゃんからの返事は素っ気ないのに、それでもめげずに喋って怒られて、呆れられても笑って話しかけていた。
自分たち親子とは全然違う、気を遣わない関係っていうのかな…少し憧れる。
リカちゃんが俺の背中をポンと叩いた。顔を上げれば優しく笑ってくれていて、なんだか励まされた気になった。俺の変化にすぐ気づく…そういうところがズルい。
「とりあえず寒いから中に入れてくれよ。俺はともかくこいつが風邪ひくのは困る」
「天使ちゃんが風邪ひいたら私が付きっ切りで看病してあげようか?」
「米すら炊けないくせに調子に乗んな。お前は黙ってばい菌と見つめ合ってろよ」
「だから細菌だって言ってるだろ……とにかく中へとお入り。由良以外はみんな帰って来てるから」
先導するかのように、おじさんが家へと向かう。その後について行きながら俺はリカちゃんに尋ねた。
「みんなってなに?」
小さな声でリカちゃんに聞くと返ってくるのは「そのうちわかる」っていう意地悪な返事だけだった。
リカちゃんは一体俺を誰に会わせようとしてるんだろう。てっきりお父さんだと思ったのに違うらしく、俺は抱き寄せられたまま家の中に入った。広すぎる玄関を上がり、長い廊下を抜け、いくつもある部屋を全て無視して奥まで進む。
その間もリカちゃんの手は俺の背中に宛がわれたままだ。
前を歩くリカちゃんのお父さんの背中が、リズムよく揺れやっと立ち止まる。
目の前の襖に向かってリカちゃんのお父さんが声をかけた。
「どうぞ」
その奥から聞いたことのない声が返ってくる。
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