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仲間 2 (リューside)
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木の葉の擦れる音と羽ばたきが聞こえたかと思うと、慣れ親しんだ気配が濃厚に香る。
「……ったく」
呆れて目をやれば、日に焼けたかのごとく色の抜けたダークブロンドと浅黒い肌の男が、よぅ、と太陽よりも眩しい、見るものを虜にせずにはおかない笑顔を返してきた。
世間一般で言えば立派に、長身かつ美形の部類に入るのだが、整った顔にありがちな冷たさは微塵も感じられず、好奇心でキラキラ輝くアーモンド型の茶の瞳は、吸い込まれそうなほど深く澄み渡っていた。
「……アホウのお守りはいいのかよ」
時の王の心をつかみ、今や王宮でも一二を争う権力者となった男は、大丈夫なんじゃねーの? と実にお気楽に肩をすくめて見せた。
「敵意バリバリのおっさん達とやり合うのも楽しいけどさ、やっぱ肩こるんだよなぁ。こーゆー息抜きは貴重だろ」
木の葉のクッションに抱かれながら、実に幸せそうに目を細める姿は、まるで町の酒場で仕事帰りの一杯を引っかける若者のような気安さだ。
これが王の側近中の側近などと知ったら、誰もが度肝を抜かれるに違いない。
「もっとさぁ、命燃やすみたく熱くなりてーのに、なかなか張り合いのあるヤツってのはいないよんだよなぁ。あっ、けど最近、面白いおもちゃ見つけてさ」
と、楽しげにお気に入りの騎士の話をし始めた。
聴けば聴くほど、その騎士とやらが気の毒になってくる。
笑顔一つで人を芯から魅了する男は、同じ笑顔で相手の逆鱗に触れ、さらにはそれを楽しむ、かなり壊れた性格の持ち主でもあった。
ゆえにファンも多いが敵も多い。
時折ふと湧き上がる自分の破滅思考は、多感な時期をこの男と共に過ごしたせいではないかと、慕わしさと虚しさの入り混じった複雑な感情にかられ、ため息をついた。
「息抜きなら、他でやれよ。……ンとに、テメェと関わるとロクなコトがねェ」
「とか言って、会えて嬉しいって顔に書いてあるぜ?」
ニヤリと笑われ、殺意が湧いた。
「……串刺しにして、太陽で焦がしてやろーか?」
「おっ、久しぶりにやり合うか?」
これ見よがしな殺気を放ったにも関わらず、楽しげにファイティングポーズを取られると、もはや怒りを通り越して呆れてしまった。
「……バカバカしい。やり合うならバカ犬がいンだろーが」
「おいおい、時の王に向かってバカ犬たぁ、聞き捨てならねーな」
「……テメェに言われたかねェよ」
「オレはいーんだよ。バカにしようが、けなそうが、全部愛情の裏返しだ」
どこまでが本当で嘘なのか、ニカッと輝かんばかりの陽の波動を感じさせる笑顔からは、うかがい知るすべがない。
出会った当初からそうだった。
……底が知れない。
この世のすべてを笑い飛ばし、限界まで楽しんで、後はどう転ぼうが知ったことかと言いたげな破天荒な言動に、周囲は振り回されっぱなしだ。
己が呪われた存在であることさえ利用し尽くして楽しむ豪胆さに惹かれ、魅せられ、置いていくのなら死ぬと脅し、自ら望んで闇に堕ちた。
当時の、己の存在ごと灼き尽くすかのような熱はすでに遠く、今や家族のそれにも似た愛情に落ち着いてはいたが、やはりかけがえのない存在であることに変わりはない。
「しばらく会ってなかったから、元気でやってるかと思ってさ」
不意に見せられた親愛の情に、ふざけんな、と吐き捨てようとして、失敗した。
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