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出会いは秋でした 13
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ミカのアパルトマンに住むことになり、左腕も治り、勉強と家事に勤しむ毎日を過ごすアル。
しかし、時々ふらりと遠くまで歩いて行ってしまい、帰宅したミカが慌てて探しに行くことが何度もあった。
携帯電話を持っていれば迎えに行けるのに置いて出ていくことも多く、毎度ミカをハラハラさせる。
それでも見つけると嬉しそうに抱きついてくるから怒れない。
「アル~、いつになったら放浪癖治るんだい?」
「ごめん。なんか呼ばれてる気がして、つい」
悪びれもせず笑って舌を出すアル。
やがて彼のこの行動には‘散歩’という名が付いた。
その後、そんなことを何年も繰り返す内に、徐々にその頻度は減り、そして―。
「そういえば、もう1年以上‘散歩’に行ってないね」
「もう! いい加減からかうのやめてよ」
大人びた顔立ちになったアルは今、ミカの社長室にいる。
机を挟んで立つ彼はミカに贈られたスーツ姿だ。
「これからはそんなことできないよ? いい?」
「うん、わかってる」
ミカは小さなカードを手に持つと顔を引き締め、姿勢を正して張りのある声で告げた。
「アル・ウィリアムズ、これがあなたの正式な社員証です。今日から我社のために力を尽くしてくれることを期待します」
長いこと手書きの仮のままだった社員証がプラスチック製のカードと引き換えられた。
社員証を受け取ったアルは感慨深げに、その小さなカードを両手で包むと、まっすぐにミカを見て答えた。
「はい、精一杯努力します、ミカ・ウィリアムズ社長」
その後、引き換えられたはずの仮社員証は、アルが宝物だからと言って戻してもらい、ラミネート加工されて彼の机に飾られた。
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