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「私だって、結婚じたいですよぉっ……!」
「まだ24なんですから、大丈夫ですよ」
「でも、周りの同年代の子はっ、皆旦那ざんいるんですっ!」
「俺だって独身ですから」
はは、と愛想笑いを浮かべながら、生駒さんを背負ってタクシーを待つ。
外が暗くなるまで居酒屋で過ごし、生駒さんには相当な酒が入っていたから店を出てきた訳だ。
大して耐性も無いくせに、生駒さんはよく飲む。
「独身いやだぁぁ……!」
生駒さんは俺の背中で喚いた。
(結婚か……)
こんな話になって、普段は考えないことに思い耽る。
生駒さんは24歳だけど、俺はもう26歳だ。
普通ならば、結婚していて当たり前な年齢だと思う。
こんなに真面目に生きてきて、どうして俺が結婚していないのだろうと、この時ふと思った。
いや寧ろ、その真面目さが仇となって結婚出来ていないのではないだろうか。
(やばいよなぁ……)
本当に俺は、結婚も出来ない相手と付き合っていいのか?
親はとっくの昔に他界しているから、別に親孝行がしたいとか、そういう訳では無いのだけれど。
「……親がうるさいんでずよ……っ」
ずびっ、と生駒さんが鼻を啜る。
頼むからスーツだけは汚してくれるなよ、とハラハラしつつ、俺はまた愛想笑い。
生駒さんは、一体何度同じことを言えばこの話に満足するのだろうか。
「それだけ、生駒さんのことを心配してるんです」
「私だってっ……好きで独身してるんじゃないんです!」
毎日元気な生駒さんしか見たことが無かったから、ここまで現実的な悩みを打ち明けられると、俺は困惑した。
そう思ってから、世良さんが俺の話を聞いているのも面倒だったのだろうか、と先日のことが申し訳無くなる。
するとその時、今いる居酒屋の前にタクシーが止まった。
助かった、なんて思って。
そんなことを思いながら、俺は生駒さんをタクシーに乗せ、俺は反対側のドアからシートに座る。
「どこまで?」
「うぅ……私の家……」
俺は生駒さんの家が分からないから、生駒さんは自分で住所を伝えた。
▽ ▽ ▽
自分の家に帰ると、俺はスーツを脱ぐのも後回しにして、ベッドに倒れ込む。
生駒さんの愚痴を聞かされて、タクシーで寝てしまった生駒さんを家に連れて行き、そこで水を飲みたいと要求されたから水を飲ませ。
「はぁ……」
生駒さんを介抱した疲労で溜息が出た。
そう思うと、一ノ瀬くんといる時は楽でいい。
一ノ瀬くんといる時だけは、何故だが安心出来た。
あんなに嫌いだった男という生き物に、どうして安心だなんて思うのか、自分でもよく分からないけれど。
(会いたい、のか……?)
こんな時に一ノ瀬くんのことを考えるなんて変だ。
1日だけでも、一ノ瀬くんに態度を変えられるのは心苦しかった。もう、こんな提案、取り下げたい。
自分でこうしてくれと頼んだのに、また勝手な考えをしてしまう。
(一ノ瀬くん……)
今日はあまり一ノ瀬くんと話せなかった分、今からでも一ノ瀬くんの家に行きたい気分だった。
まだ、声を聞いていないんだ。
会いたい、というのと、一緒にいたい、というのは同じなのだろうか。
そんなことを考えて、俺はそっと目を閉じる。
(…会いたい……)
ただ今は、すごく眠かった。
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