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講義が終わり帰り道が途中まで一緒の祐也と別れると、歯医者に行く道を歩く。足取りが重い。
さっきから何度も零れる溜め息に、今日で何回幸せが逃げていったのだろう、と、つまらないことを考えては、更に溜め息が零れる。
すぐに一条歯科医院という建物が見えてきた。
…行きたくない。
心の底からそう思う。
脳裏に浮かぶ過去の記憶。変に緊張して喉がカラカラだった。歯磨きはしてきたが、いちご牛乳を飲んで以来、まともな食事すらとっていないことに今更ながら気付く。お腹がぐぅ、と悲鳴をあげているが、それどころではないのだ。この痛みが無くならない限り、食べる気はない。
「…気合いだ、行くしかねぇ」
頬を両手でパンッと叩くと、やけに重く感じるドアを引いた。
一気に部屋中に広がる薬のような匂いが昔の記憶を呼び起こす。この時点で、帰ってしまおうかと思ったが、受付の綺麗な女性と目が合ってしまい、どうぞと優しく声を掛けられ受付へと促されてしまった。
「あ、えっと、今日予約していた由川 凪です」
「由川さんですね、今日は診察が初めてということなので、こちらの紙に記入をお願いします」
初診のとき、最初に渡される紙に手早く書き入れると、すぐに「奥へどうぞ」と通された。
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