アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
163.
-
グズグズと泣き続けて涙が止まった頃、僕は徐にキョウ君から離れて窓際に立つ。
ここは2階だから窓から見える中庭にいる生徒と目が合うことはない。
締め切ってある窓に触れながら、窓越しに映るキョウ君を見て息を吸った。
「…言い合いの途中に母親が兄さんに言っただ。"貴方もあの人の血を受け継いだ"って」
「…あの、人?」
「"男に手を出すなんてあの人と同じで気持ち悪い"って…そう、言ったんだ」
その言葉を口にするだけで心無しか、呼吸がし辛く感じる。
それはまるで僕の罪を忘れるなと言っている呪いのようで…それで身体を蝕まれている気がする。
後ろでキョウ君が「あの人…血…」とブツブツとキーワードを呟く。
そして、何かに気付いたのか椅子から立ち上がると僕の後ろに立った。
「…それはもしかして…薺のお父さんのことを言ってるのか?」
「…そうだよ。中学の時に親が離婚したって言ったじゃん?離婚理由は父親が男に手を出したから。だから母親は、今でも男同士の恋愛に嫌悪感を抱いてる」
「それは…浮気ってこと?」
「ただの浮気なら…僕達家族はバラバラになることはなかったよ」
真後ろにいたとしても直接キョウ君の顔が見れない。
今から話すことは少なからず、誰もが嫌悪感を抱く話だから。
だから、それを面と向かって話せる自信はない。
無意識に小さく何度も深呼吸をして、近くにいるキョウ君に聞こえてしまうんじゃないかと思うぐらいの心臓の高鳴りを抑えようとする。
それに気付いたキョウ君は、ソッと僕の背後から腕を回して抱き締めた。
前で交差するように回された腕に、ガッチリと身体が固定される。
「…話したくないなら話さなくていい。ここ最近、早足で進み過ぎたんだ。少し薺の心を休ませてもいいんだよ?」
いつもの優しい口調に諭されて、それでもいいかも…と一瞬思ったが、多分今言わないと言えなくなる気がした。
僕は強くないから…後でと後回しにするとタイミングが掴めなくなるだろう。
だから…話すなら今しかない。
「…大丈夫、大丈夫だけど…このまま聞いてくれる?ちょっと顔を見て話せる勇気がないから」
「いいよ、いつも言ってるけど薺のしたいようにすればいいから」
「本当にキョウ君って、僕には甘いよね」
背中から回されている腕を掴み、クスクスと笑う。怖いけど、この人なら大丈夫だと思ってしまう自分もいる。
この手を離したくない…改めて、そう感じた。
「…手を出した相手が悪かったんだよ」
「相手?」
「そう…だって誰も思わないよ…」
そこで一度言葉を切り、真実を隠そうとする口を叱咤して息を吸い込んだ。
「…父親が血の繋がった息子に手を出すなんて…」
そう言った瞬間、痛いぐらい強く抱き締められた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
164 / 233