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昼には来ると言っていたんだ。まだ応援席には姿が無かったようなのできっと、もうすぐここに――来た。
スーツ姿。ああ可愛いな。風に上着がはためいちゃったりしてさぁ。
栗色の髪がふわふわと顔の周りを舞っていて。大きな目を楽しそうにきらめかせちゃったりとかしてもうすんごい可愛い……兄貴に、今から俺は、告白をするんだよな……。
うわ。心臓の音がやばい。何だこれ。
暴走した機関車が走っているみたいだ。どどどどどどって胸に音が凄く響いている。
顔が熱い。緊張で喉が鳴った。
優斗がこちらに気づいたようだ。手を振ってきた。
ああ、俺はここにいるよ、優斗――だなんて恋人同士の待ち合わせシーンを想像している場合じゃあない。
落ち着け。本当に、落ち着け。
声を裏返さずに。格好良くだな。
「もう昼か? 俺、遅れたかな。すまん」
すぐ近くに来た優斗の笑みが本当に可愛らしくて。頬が緩んでしまう。
いつの間に俺は、こんなに兄貴を好きになったのだろう。何が切欠だったのか。
思い返す暇は無い。もしかしたらあいつら三人で俺を探しているかもしれないし。
手を差し出す。
弁当を乗せられた。
いや、違うんだ。
「顔、真っ赤だけどどうした? まさか熱があるんじゃあないだろうな」
下から覗き込まないでくれ。
思い切り息を吸う。それを肺の中で留まらせ――とりあえず弁当を、石でできた門の上に乗せる。
そして息を細く、ゆっくりと吐く。吐く。吐く。
「何だお前。どうしたんだ?」
いぶかしんでいる優斗の両手を、集めるようにして両手で掴む。
おお、驚いたな。目が二倍に大きくなったぞ。
さあ言え。言うんだ。
航だってはっきり言っただろ。湊だって、俺にはっきり告白をしてきたんだ。
俺も、男だったならばあいつらと同じく勇気を出せ。
足が小刻みに震える。糞。ああ、どうしよう。
優斗が小首を傾げている。可愛い。キスがしたい。抱きしめたい。
しかし変態だと罵られてしまったら? いや、構うものか。
どうせ兄弟なんだ。どんな事が起こったとしても、血の絆は切れない。
逆にそれを利用する小賢しさを持つべきだ。
「兄貴!」
意を決して叫んだ、その時――
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