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真剣に優斗を見つめると、その表情が緩んだ。
「そうか。そうだよな……そうだよな」
突然失う悲しみは、兄貴だってわかっているはず。こんな時に傍におれないで、何が兄弟だ。
優斗が身体を揺らしながら、廊下へと歩き出す。その背中に付き添った。
「じゃあ……俺は寝るから、水でも持ってきてくれ。食べ物は今は入りそうもないからさ」
階段を下りてゆく後姿を見送って、すぐに部屋へ戻った。
枕元に置いていた携帯電話を手にとり、三人のうち一番登校が早い悠馬へと、今日は休むと教師へ伝えてくれ、とメールを送る。
すぐに返信がきた。どうしたのか? って、まぁ普通は理由が気になるわな。
嘘をつく必要も無いので、優斗が風邪を引いたんだと返信をし、寝巻き代わりに着ていたスエットのズボンの後ろポケットへと携帯電話を突っ込んだ。
またメール受信を知らせるバイブが鳴っているが、とりあえずは――水を、優斗の部屋に運ばなくては。
階段を下りてキッチンへ行く。さほど広くない二階建ての一軒屋だが、さすがに両親が亡くなってからは部屋を持て余していた。とりあえず二階にあった俺の部屋はそのままに、優斗が一階にあった両親の寝室だった場所へと部屋を移した。
どうして部屋を移るのか、最初は意味がわからなかったけれど、よく残業をして深夜に帰ってくる兄貴を見ているとなるほど、と思う。きっと、その時間帯には寝ている俺へ気を使ったのだろう。
冷蔵庫を開き、水の入っている二リットルのペットボトルを取り出す。これだけあれば今日一日くらいは大丈夫だろう。戸棚からグラスを出し、その二つを持って優斗の部屋へ向かう。
ドアを開くと――おい、ベッドの上で、布団も掛けずに倒れてんじゃあねぇかよ。
学校を休んだのは正解だったな。
持っていたものをベッド脇にあるサイドテーブルへ置き、優斗に近づく。
うつ伏せで顔は見えない。しかし、耳が真っ赤だ。
「兄貴、ちゃんと布団に入らないと」
声を掛けながら身体の下敷きになている掛け布団を何とか引きずり出す。
「わかって、る」
息も絶え絶えだ。
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