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target4-20.複雑化
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「ねぇ、颯都。颯都は……」
カチャン、と食器を置き颯都を見据える。
灰青の瞳が自分に向けられ、心拍数が更に早まっていく。
けど…知りたい。
顔が熱くなるのを感じながら、勇気を出して口を開いた。
「す…好きな人とか」
「わ――!璃空さまぁあーっ!!」
雪斗の言葉に被さるように、生徒が黄色い声を上げたのを筆頭に、次々と歓声が生まれる。
颯都が隣で溜め息を吐くのも分かる。
そんな二人を取り残し、場は盛り上がりを見せていた。
「あの、璃空様!サインください!」
璃空に近付きサインを求める生徒の前に、見覚えのある小柄な生徒が立ち塞がる。
「ちょっと!前も言ったけど、璃空様への直接行動は禁止。サインほしいなら親衛隊通して」
親衛隊隊長、結城郁が仁王立ちで物申したが、簡単に引く相手ではなかった。
「はぁ?何でお前に指図されなきゃなんねーんだよ」
「親衛隊隊長だから。文句あんの?」
言い争いが続き、食堂もざわつきが増していく。
親衛隊と生徒が争いになるのは偶にある。
普通から見れば、親衛隊が有利な立場にあるからだ。
憧れの側に居れて、色々都合の良いように思える親衛隊。
実際はそうも楽ばかりではないと聞くが、今まで取り締まられていなかった分、実態が明らかになっていない部分があるのだろう。
何にせよ収拾がつかない、と雪斗は思っていた。
前は関係のない騒ぎが起きるとその場から逃れていたが、今は風紀委員という立場がある。
しかし、下手に会話に参加すれば非常に決まりが悪い事になりかねない。
どうしたものか…と頭を悩ませていた時。
「…五月蝿ぇ」
低音の呟きが騒がしい空間に不思議と響いた。
ピタリと全員の動きが止まり、皆の視線が颯都に注がれる。
「静かに食事も出来ねぇのかよ、お前らは」
颯都がクールに言い放つと、我に帰った人々は落ち着きを取り戻し食事に戻っていった。
漸く静かになり、颯都も食事の続きに戻ろうとした。
「何だ、妬いたか?颯都。お前にだったら特別にサインしてやっても良い」
「貰うんだったら会長のより、オレのだよね~?」
「全く…朝から騒がしいですね」
颯都と同じテーブル席に勝手に座り出す奔放な生徒会の面々。
両サイドからの奇妙な言い争いを颯都は聞こえていない振りを貫く。
食事を取り終えて、二人の会話に耳を傾けてその身勝手さに溜め息を吐く。
「お前らなぁ…――」
しかし、その後の言葉は続かなかった。
璃空がいきなり口で、颯都の口を塞いだのだ。
その光景に、周りも思わず目を奪われる。
「…だから言っただろう。颯都は俺のモノだと」
それを見た雪斗は…胸に棘が刺さるような痛みを感じた。
(…颯都)
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