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至って真面目な告白をしているつもりなのか、狐塚さんの表情は真剣そのものだ。嘘だと思いたいのに信じてしまいそうになる。今ならまだ間に合うから、どうか嘘だと言って。
「何がそんなに怖い?」
「…何も怖くなんか」
「ないわけねーだろ。普通、人に好意を寄せられれば少なからず喜ぶのに、お前は自分に向けられる好意から意図的に逃げようとしている。今だけじゃなく、客への対応で分かってた」
この人を侮っていた。ただの俺様イタリアンシェフかと思ってたけど、しっかり俺のことを見てくれていたんだ。
俺はポーカーフェイスを特技にしていると言ってもいいくらい、笑顔の下でいろんなことを考えている。ちょっと観察するくらいではバレないようなことを言い当てられて、返す言葉がなかった。
「26年生きてきて自慢じゃねーけど、初めて自分から告ったんだぞこっちは。冗談にしようとすんな。俺の気持ちと向き合え」
「…じゃあ向き合って言いますけど、俺、ずっと好きな人がいます」
「付き合ってるのか?」
「付き合ってない、です」
「告白は?」
「…もう質問は受け付けませ~ん」
「はぐらかすな。その恋がうまくいってないから、お前はそんなに辛そうな顔してんだろ?」
辛そうな顔なんてしてない。うまくいかない恋なんて、最初から決まり切っていた。俺のこの想いは絶対に報われないし、嫌でもいずれ消える。好きになっても絶対に辛いだけの人に俺は恋をしている。それでも唯一の繋がりがあるから、些細な幸せだって感じるんだ。
「俺がお前の恋を終わらしてやる」
ダメなんだよ、それじゃ。俺の恋は狐塚さんに終わらせられなくてももう少しで終わる。たとえ今の気持ちを明日にでも無くして、狐塚さんと新しい恋を始めたとしても、同じことの繰り返しなんだ。
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