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「いったぁ…」
寒さで目が覚めて、先程の暴力での痛みを感じる。
こんな生活もう嫌だ。楽になりたい。
いっそのこともう死んじゃおうか…
首吊り?飛び降り?薬の過剰摂取?
どれも苦しい、もしくは痛い。安楽死のように痛みなく楽に死ねればいいのに。
「おい!お前ここで何をしている」
声が聞こえて振り向くとスーツを着た大きな男の人が数人。
みんな俺を鋭い目で睨みつけてくる。
瞬時に分かった。普通の人間ではないと。
彼らが放つ空気は普通ではなくて、所謂ヤクザ。
殺される。それも残虐な方法で。
「聞いているのか。ここで何をしている、と聞いている」
かなりの威圧感と殺されるという恐怖。
震える足に力を入れて、隙を見て街灯が見える方へとひたすら走った。
「おい、こら!待て!」
後ろからバタバタと追いかけてくる足音がして、捕まったら殺されると後ろも見ずにひたすら走った。
誰かに助けてもらおうと学校の方まで走ったはいいが、男たちの足が速く追いつかれてしまった。
手を背中に回され押さえられたままスーッと横につけられた国産ミニバンに押し込まれ、車は発進する。
両サイドは囲まれていて逃げ場はない。
そのうち目的地についたのか車は止まった。
無理に車から引きずり降ろされ見えたのはでかい倉庫のような場所。
ここで殺されるのかと絶望に陥る。
拳銃で打たれる?ナイフでめった刺し?暴行の末に海に落とされて溺死もあり得る。
本当に人生散々だった。泣きっ面に蜂ってことわざは俺の為にあるんだと思う。
「改めて聞く。お前はあそこで何をしていた」
「なに、も…」
「何も、ねぇ。それで俺らが納得すると思ってんのか」
「だって…ほんとに、何も…」
カツアゲされてお金が無くてリンチされました、なんて恥ずかしくて言えなくて。
「あそこは俺たちのシマだ。最近若い奴があの辺でクスリを売ってると聞く。お前じゃないのか」
「俺は何も、してません。クスリ…って何ですか?」
「若頭、どうしましょう?」
若頭と呼ばれた人の方を見ると、一段と黒いオーラを纏う目鼻立ちの整った男。
背は180は越えているだろう大きく体格も良い、黒髪で前髪をかきあげていて、俺を見下ろす黒い瞳は切れ長で冷めていて、冷酷そうだと感じた。
ジッと見られて怖いはずなのに魔法にかかったように視線を逸らすことが出来ない。
クスリが何の事かも分からない。
ヤクザと結び付くクスリと呼ばれるものといえば、覚醒剤やニュースで見る違法なドラッグなどか。
いずれにしても俺には何の関係もない。
殺されるのは怖い。
それでも俺はそんな運命なのかもしれない。
正直生きることに対して執着しているわけではない。
一度捨てられた命、逆に今生きているのが不思議なくらいだ。
けれど、どうせ死ぬのならば苦しくなく楽に死にたい。
拳銃で打たれるのなら気を失っているか寝ている間にしてほしい。それなら痛みを感じないで済む。
「本当に無関係なんだな?ならば、あの場所にいた理由を偽りなく吐け」
もう隠せない雰囲気で、ダメ元であの場所での出来事を包み隠さず話した。
「ほう。…豊島(トシマ)、調べはついたか」
「はい、こちらをどうぞ」
豊島と呼ばれた男は手際よくノートパソコンを、若頭と呼ばれる男の方へと向ける。
「ほぅ。一文無しでカツアゲされた上にリンチに合い、俺たちに目をつけられるなんて散々な奴だな。ここで無惨に人生を終わらせるか、俺のペットになるか、お前に選ばせてやる」
どちらも良い選択肢ではないが、自然に死ぬのを待つ方が痛みは少ないかもしれない。
無惨にってことは想像通り良い死に方ではなさそうだし。
「若っ、一般人を側に置くのは危険です。おやめになられた方が良いのでは…」
「いや、構わない。…どうだ、残虐な死に方をしたくないだろう。俺のペットになれ。俺の手を掴め。嫌なら俺に背を向けろ」
悩んで悩んで、でもやっぱり痛いのも苦しいのも大嫌いな俺は、手を伸ばすしかなかった。
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