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ユキくんの保護者(2)
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あっという間に翌日17時になり、俺は上司に教えてもらったゲートを使い、閻魔のもとへ向かった。
閻魔に会うのは初めてだ。地獄で就職した悪魔にとっては上司にあたるらしいが、俺は魔王のところに就職したため、全く関わりがない。
地獄の悪魔は地獄の運営に関わる仕事をしているらしい。大学時代の同期が同窓会でそう言っていた。
ちなみに俺は、魔王のもとで人間の寿命を奪う仕事をしている。寿命の7割を自らの生命維持のために使い、3割を魔王に献上している。
つまり今の俺は、仕事もせず生命維持活動もせずひたすら少年に尽くす自己犠牲的な生活をしているわけだ。
でも、幸せだから、大丈夫!
うふふ。
閻魔の部屋に着いたが、まだ閻魔は来ていなかった。
板張りの床で、正面に豪華な椅子が置いてある。たぶん閻魔の椅子なんだろう。
その椅子の後方に、2つの扉が見える。右の扉は地獄へ、左の扉は天国へつながっているようだ。
あの扉の先に、少年の両親がいる…。
一体どんな人たちだろう。きっと少年に似て、可愛くて、素直で、しっかりしてて、優しくて…
そんなことを想像していたら、自分の後ろにあった扉が開き、1人の青年がステッキを振り回しながら入ってきた。
「やあやあ、待たせたね。えーと君は…地獄!未成年に淫行を働いた罪で地獄行きだ!」
「ギクッ。…って、違う。俺は死者じゃなくて……もしかして、あなたが?」
「あはははは。申し遅れたな。僕は4代目閻魔だ!」
青年はウインクをした。
…閻魔に、見えない。想像と違う。
閻魔って、大きくて、怖くて、目つきが悪いおじさんかと思ってた。
でも目の前にいる閻魔を名乗る青年は、足が長くすらっとしていて、顔立ちもいい。シルクハットとステッキを身につけていて、どこか芝居掛かった仕草がなんだか胡散臭いところはあるけれど。
「…それで君、天国と地獄に行きたいんだって?」
「ああ。俺が今契約している少年の両親に会いに来た」
「ほほう。謝罪にかい?」
「えっ?」
「おたくの息子さんとセックスしてしまいましたすいません、と…」
「い、いやいや…というか、どうしてそのこと知ってるんだ」
「閻魔はなんでも知っているのだよ。君の契約相手は白瀬由貴くん。幼い頃両親を事故で亡くし、中学生にして天涯孤独の身。現在は君を利用して生活している」
「そんな名前だったのか…」
「知らなかったのかい?保護者のくせに」
「あの子以外の人間とあまり関わりがないから、個人を識別する名前を知る必要がなかったんだ」
「じゃあこの勢いでお教えしよう。ユキくんの父親は白瀬充。現在は地獄にいて、なかなかの問題児だ」
「少年の父親は地獄か…そんなに悪いことをしたのか?」
「ユキくんの両親が死んだ事故、父親が原因なんだ。冬で地面が凍結しているのに無理に夏用タイヤで走行して、スリップして崖から落ちたんだよ」
「タイヤを変えなかっただけで地獄行き…?」
「母親は白瀬美湖。現在は天国にいる。こちらは問題を起こすこともなく、のんびりしているらしい。ちなみに例の事故のときには、タイヤをスタッドレスに変えることを主張していた」
よくわからんが、タイヤを交換することは死後の運命も左右する大事なことらしい。
「父親が問題児って、どういうことだ?」
「まあ…行けばわかるよ。この来客用のラスターを首から下げてくれ。地獄の案内は君の同期にお願いしたよ」
閻魔がそう言うと、地獄の扉から同期の悪魔が出てきた。
「さあ、地獄へいってらっしゃい。就職したくなったらいつでもどうぞ」
閻魔がにやりと笑って手を振った。
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