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恋人 1
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その日は、珍しく正兄ちゃんが早く帰って来た。
律兄ちゃんは今日も遅くなるらしかったが、ずっと帰りの遅かった正兄ちゃんが早く帰って来た事が嬉しくて、いつもより料理を奮発して2人で沢山話をしてご飯を食べた。
交代でお風呂に入って、正兄ちゃんが借りてきたDVDをソファーに座って観る。
ソファーに座る正兄ちゃんの横に座るのは緊張してしまうから、ソファーを背もたれにしてラグの上に座った僕。
斜め上には正兄ちゃん。
ドキドキしながらも、気が削がれない様にテレビを凝視していた。
ビンポーン
「あれ?こんな時間に誰だろ?」
時間は夜の8時、遅い時間ではないが配達くらいしか人が来ない我が家。誰か来たとしても皆、事前に伝えるようにしている。
「はーい」
ドアホンを覗くと綺麗な女性がいた。
「ぁ、はい。」
『あ、夜分にすみません。竹内と申しますが正さんはいらっしゃいますか?』
彼女の言葉に心臓がドクンと大きくなった。
「あ…はい、お待ち下さい。」
ぐわんぐわんと揺れそうになる視界を何度も瞬きをして落ち着かせる。
「正兄ちゃん…竹内さん、って人が…」
ビデオを止めて、僕を見ていた正兄ちゃんが慌てて玄関へ走って行った。
兄ちゃんは僕に聞こえない様に小さく呟いたのかもしれないけど、それをボクの耳はしっかりと拾っていた。
「まなみ」って。
彼女、なんだと思う。
リビングの入口に立つ僕、2人の様子が気になって仕方ない反面、見てしまった後が怖くて、そこに立ち尽くしたままイヤでも2人の会話が耳に入る。
『まなみ、なんで?!』
『正、私の部屋に携帯忘れて行ったでしょ』
『…ぁ、会社のがあるから、すっかり忘れてたよ。ごめん。』
『いいのよ。思い出して取りに来るかと思ったけど来ないし、明日、会社の方に持って行こうかとも思ったんだけど、何度か携帯鳴ってたから。』
『ぁ、そうなんだ、ありがとう。でも、会社携帯の番号教えてなかったかな?』
『会社携帯を私物化するのは駄目でしょ。』
『あぁ、それ前も言われたね。』
あぁ、正兄ちゃんが昨日遅かったのは彼女の所に行ってたからなんだ、って思ったら胸がギューッと痛くなって涙がじわりと滲んだ。
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