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若菜には感謝してる。
初めての感情や経験を沢山くれた人だから。
恨むことなんてひとつもない。
俺はお前以上にいい女は知らないし、きっと今後知ることもない。
好きだったよ、きっと転校してきて他の女といる時も男に抱かれてる時も…玖音に出会ったばかりの時も心のどこかで…
「…和さ」
「ん?」
やっと泣き止んでくれて落ち着いてから店を出て若菜の帰り道を歩く。
いつも送って帰ってた道。
「今、好きな人いるでしょう」
「は?!」
いきなり核心を突かれて特に何も無いのに足がもつれて転びそうになる。
目元を赤くしながらくすくす笑って新雪を手に取って雪玉を作りながら続けた。
「なんか雰囲気柔らかくなったから。きっとそうさせた人には格好いいとか悪いとか関係なくて全てを見せてるんだろうなって」
あとそれ、と首元をとんとんとやられてネックレスを付けてることを思い出した。
「ペアリングデザインだし和アクセサリーとか自分で買わないもん」と言われて認めるしかなくて素直に答えた。
「確かに格好いいとは思われてないかもな…けど、すげえ想ってくれてるし、俺もそうしたい」
玖音には…
もうペットから始まった時点で情けないところも弱いところも全部知られてる、敵う訳ない。
「…別に若菜の前で自分作ってたわけじゃないからな。ただ…お前には格好いいって思われたかっただけで」
「わかってるよ、私といる和が嘘じゃないって事も、わかってる」
そう寂しそうに呟いて空高くに雪玉を投げて俺の真正面に向かい合うように立ち塞いで
かじかんでる指先でゆっくり俺の手を握った。
「…ごめんね、一人で抱えさせて。…でももう大丈夫なんだね」
…なんとなく気づいてた。若菜の気持ち。
けど気付かないふりをする俺に、気付かないふりをするお前は
きっと俺なんかよりずっと強い。
「…ありがとう、和」
真っ直ぐ俺をみて笑う彼女を見た瞬間、
「きゃ!」
何故か俺の方が泣きたくなって彼女を抱きしめた。
最後の抱擁。
…玖音に心の中で謝ってから、若菜にまだ言えてなかったことを伝える。
「なご、み…?」
「俺…若菜のこと好きだったよ。ずっと。別れてからも好きだった」
「…うん」
「…今は…大切にしたい人がいるから、若菜の隣にいることは出来ない」
「…う、ん」
「あんな風に突き放して傷つけたのに、想っててくれて…ありがとう」
ぎゅうっと抱き締めて、身体を離す。
少しだけ懐かしい匂いに胸が締め付けられるけど笑ってみせる。
「意味の無いことなんてないって。偶然か必然かはわからないけど全部意味があるんだって」
「…じゃあわたしと和が今こうしてまた会えてるのは…偶然?必然?」
「…偶然が重なった必然…とか」
「…何それ」
涙を溜めながらも微笑む彼女につられて笑う。
会えてよかった。
涼と悠太郎と遊ぶ約束がなかったら若菜ともう一度話そうなんて出来なかった。
もう大丈夫。
過去の傷も支えてくれる人がいる。
きっと大丈夫…
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