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夏 -1-
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大学もちょうど長期休業に入って、安原はちょっとした好奇心から長期のリゾートバイトに向かった。
SPRの待遇がすごくいいからこそなせる技、だと思う。麻衣のように体を張って調査に赴くわけでも、かといってもう一人の雑用係のアルバイト、高橋優子(通称:タカ)のようにオフィスの雑用の一切を任されているわけでもない安原はここぞとばかりに沖縄に飛んだ。
安原がやることと言えば、近隣の聞き込み調査くらいのものだ。少年探偵団なんて呼ばれたりして。彼は本当に聞き込みが上手だった。
でもまあそのくらいなら所長やその助手のリン(本名:林興徐、香港出身の巫蠱道師(らしい))にもできることだし、ここは普段できないことをやろうと遥々飛び立ったわけだ。
実を言うと、本当は行くつもりなんてなかった。リゾートバイトとなると、夏休み期間のほとんどをリゾート地で過ごすことになる。
そうなれば、家に帰ることはおろか友人などに会うことさえ儘ならなくなるのだ。
ホームシックというわけではないが、滝川に会えないことだけが安原にとって唯一の気がかりだった。
けれどもここ最近、お互いに予定が入れ違いなかなか連絡を取れないでいた。本当はすぐにでもしたいところだが、あまりに間が空きすぎて少し気まずく感じてしまう。
それに、これはあくまで仕事の都合上で交換した連絡先だ。あまり私用の連絡はできなかった。
(この先僕が東京に帰るまで、たとえ調査があっても滝川さんには会えないんだよな。呼んでくれたりとか……は、さすがにしないか……)
そこで『みんなに会えない』と言えない自分がいる。それだけ彼の心は滝川のことばかりでいっぱいだった。
とりあえず沖縄に行くのでしばらくは帰ってこないことだけでも伝えておこうと、1通のメールを残しておいた。
返信は、『了解。頑張ってこいよ』といった簡単なものだった。
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