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第5章
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心臓が一気に跳ね上がる。
表情に出ぬよう、気を配りながら
唾を飲み、七瀬は八代を見つめた。
「…そうですが、
彼が何か?」
八代はそんな七瀬を見て、おかしそうにクスクス笑う。
「まあそう力まないで。
彼は、あまり品行方正、とは言えないような生徒だったよね?ついこの間まで…。」
意味ありげに八代は言葉を切る。
七瀬は膝に置いた手を強く握りしめた。
「でも、最近変わって来たと聞いている。
授業に出ていかがわしい火遊びも控えているってね。…そして、それが君のお陰だとも。」
…一体どこの誰だ、そんなデマを言いふらしたのは。
「根も葉もない話です。
彼の変化は彼自身の努力と行動の結果です。」
「そうかな?」
八代は首をかしげ、七瀬を覗き込む。
いたたまれなさを感じて七瀬は目をそらす。
「彼は随分、君に気を許しているという話だけど。」
「ただの、一クラスメイトです。」
固い顔付きを崩さぬ七瀬に、
ふう、と息を吐き、八代はゆるく首を振った。
「わかって欲しい、七瀬くん。
ともあれ、君の力で問題生徒が更生して来ている、という事で、ぼくら生徒会は君の力を買っているんだ。
是非、生徒会に入って一緒に仕事をしたいとね。」
「おれに力なんてありません。」
八代は苦笑を浮かべて席を立った。
「やれやれ、なかなかに手堅いね。
まあ良いさ!…いきなりこんな風に連れ込んで
いきなり答えを出せっていう方が難儀な話だ。
じっくり考えてみてくれないかな。
僕はいつでも待ってるから。」
八代は歩み寄って、七瀬に向かって
手を差し出した。
七瀬は戸惑いながらも、立ち上がり、
八代の手を握る。
気が変わる事なんか絶対ないとは思うが、
八代が漂わせている空気からはそうも言えず、
一礼して部屋を出た。
そして、その時は気付かなかった。
見送った八代の目が、獰猛に光っていたことに。
生徒会室から出て、七瀬はホッと息をつく。
なんだか異世界から現実に帰って来たような気分だ。
こんな事で役員なんか絶対務まるはずがない。
会長やほかの役員が何と言おうと買い被りだ。
自分にそんな価値はない。
重い足取りを引きずりながら、教室へ帰ろうとすると、少し離れた壁にもたれかかりながら、
腕を組み、こちらを見つめている人物に気がついた。
「…遅かったな、七瀬。」
御船が低い声で話しかける。
…何でここにいるのだ。
「…なんだ。二度と話しかけるなって言っただろ。とっとと教室に帰れ。」
「生徒会にいるわけか?」
鋭い目で七瀬を睨みながら、御船が問いかける。何の話か、と眉をひそめると、御船は壁から身体を離し、こちらに近づいて来た。
「…お前のいう“健全な”懸想相手とやらは。」
ーーーけそう?
目前に迫った御船を見上げ、ようやく七瀬は思い出す。
ああ、
さっきのあれか。
御船はまだ腕を組みながら、七瀬を視線で捕らえている。
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