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199 後日談
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美湖ちゃんのお母さんは、無事、面接を突破した。
実技試験があったらしく工業用ミシンに四苦八苦しながらも、時間内に美しく縫製出来たという話だ。
夜のお仕事は木曜の夜までで、土曜の朝から新しい職場へ出勤すると言っていた。
「昼間、1人にさせる時間もでてきますが、夕方から朝までずっと一緒にいれますから、大丈夫。」
そう言って美湖ちゃんを優しく抱きしめていた彼女は、もうあの惨状を繰りかえなさいと誓っているようだった。
「辛い時には、頼ってください。」
おれたちは3人で固い握手を交わした。
------------※ ※ ※------------
「美湖ちゃんと一緒に寝るの・・・木曜までになっちゃった。朝ご飯も、金曜の朝までだし。」
寂しい。
新しい門出を祝う気持ちは大きいが、美湖ちゃんには愛情をどっぷり注いでいた自覚があり、急に手元から居なくなってしまう寂しさに胸が苦しくなった。
「お母さん、頑張ったんだもん。喜んであげなきゃだよね。美湖ちゃんにとっても、母親と一緒に過ごせる時間が増えることは良い事だし。」
これは、自分に対しての言い聞かせだ。気を緩めれば泣いてしまいそうになる自分を、必死に暗示にかけている状態だった。
「さーや。おいで。」
風見さんが手を広げ呼んでくれた。甘えて、胸に飛び込む。
「すぐ隣に居るんだ、いつでも会える。今度、遊園地や動物園、映画館。美湖ちゃんの行きたいところに連れて行こう?俺たちは、美湖ちゃんの友達なんだから。」
「そうだね、おれたちは仲良しのお友達になったんだった。」
スンッと鼻をすすって、気合いを入れる。
「さ、今日もお仕事頑張ろうね。」
「おうッ!」
今日は火曜日。
まだまだ美湖ちゃんと一緒に居れる。
残り少ない奇妙な同居生活を楽しむと誓い、掃除機のスイッチを入れてから職場へ向かった。
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