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(落ち着け。これは、仕事だ。冷静に、迅速に、やるべきことをするのが仕事…。)
心頭滅却しようと、目を瞑って自分に言い聞かせるのを繰り返す。
「…おはよう。」
(あ、我妻さんじゃん。)
「おはようございます。」
反射で切り返した落合は、あんぐりと口を開く。まるで、さも何事もなかったようです!!
…我妻はこちらに振り向きもせず、自らのデスクへと向かっていく。しかも、途中、すれ違う社員に挨拶は欠かさない。
『俺は、お前が考えるような完璧な上司なんかじゃない。むしろ、頑張っていてそれでも凡ミスやらかして、見栄張ってやっと立っていられているような人間なんだ…。』
金曜の夜に上司が吐露したフレーズを思い出し、たちまち半眼になる落合だった。
(いや。…いやいやいやいや。嘘じゃん。真っ赤な嘘じゃん。ホラ吹きじゃん。)
落合は何事もなかった風を装い、デスクに向かい、パソコンを起動させる。机の上を整理させながら、頭の中では感情が散らかり放題だ。
(え??…なになに。どこが完璧じゃない上司??見栄張って立っている人間??…ええ??あのワンフレーズ丸々俺の聞き間違いぃ~??)
涼しい顔しやがって、と舌打ちを一つする落合に同じく朝の準備をしていた水越が話しかけてくる。
「…なぁ、落合。ちょっと耳貸せ。」
「何だよ、水越。五分で十円な。」
「お前の耳、もうちょっと価値あっていいと思うぞ…。」
渋々、水越の方に身を寄せると、同僚は慣れた様子でそっと耳打ちする。
『…我妻さん、何かあったか聞いていないか??妙に色っぽいぞ。』
「え…っ??」
ドギマギしている落合の反応を誤解したらしい。水越はやれやれと肩を竦める。
「鈍感お子ちゃま・落合には、まだ早い話だったか。」
「鈍感言うな!!」
「お子ちゃまは許容範囲内なのか…。」
あからさまドン引きしている水越に、落合は問いかける。
「…あのさ、我妻さん普段と変わりないよ。気のせいじゃないか??どこ情報だよ、それ。」
ふっと、水越は同僚の意見を鼻先で笑い飛ばす。
「これだから、お前は鈍感お子ちゃまなんだよ。いいか??情報筋はうちの会社の受付嬢を初めとする百戦錬磨の情報通お姉さま方だ。」
「ふぅん…。」
(女性社員の噂話は、皆話半分に聞いているし、放っておいても問題なしだろ。)
更に、と水越は言い募る。
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