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怒気満載の我妻の声に、年下の男は口元に締まりがなくなる。
(ダメだ…っ!!これ絶対、今の我妻先輩の顔真っ赤だ!!…やばい、想像するとすっごいカワイイだろ…。)
くらくらしている落合そっちのけで、上司は凄んでいる。
『べっ、別に俺は!!…そんな、お前のことばっか考えているわけじゃないし。今夜だって、明日の会議に備えて色々と忙しいんだよっ!!お前にかまっている暇なんか…。』
(おやおや…。)
ご立腹中の上司に、落合は眉を寄せる。
「じゃあ、我妻先輩は俺の声なんか一ミリ足りとも聞きたくなかったんですね。」
『え。』
あからさま、静かになる電話の向こうに涼しい顔で落合は続ける。
「ホテルのふっかふか贅沢ベッドに寝っ転がっても、『落合から連絡がなかった』とか『落合の声が聞きたい』、なんてぜぇ~ったい思わなかったですね??」
『お、おい。待てよ。な、何もそこまで言ってねぇだろ。』
鬼上司の声に、不安が滲み出す。
「大変失礼しましたぁ~??じゃっ、俺は二度とこの電話番号にかけないんで。今度は社内携帯の必要最低限で事務的な連絡しか我妻先輩とやりとりしないんで。じゃあ、切りますね??お仕事中、大変失礼いたし…。」
『待ってくれよ、落合!!』
我妻のらしくない大声に、手が疲れた部下は持っていた携帯を耳に挟み込む。
「…何かありましたか??」
年下の丁寧な言葉遣いに、我妻は縋るような声音を出す。
『わ、悪かった。お前の気分を悪くする気じゃなかったんだ。その…謝るから。』
「先輩。」
普段は思いもよらない、しおらしい相手の態度に落合はごくりと生唾を飲み込む。
「…アンタの肌に触りたい。手ェ握りたい。抱きしめたい。アンタの匂いを嗅ぎたい。温もりを確かめたい。」
ごめんな、と落合は足元に視線を落とす。薄暗い闇の中。大きな足に無理矢理履かされた安価なサンダルが哀れに見えてくる。
「ぶっちゃけさ。俺の頭は、あの夜からずっとアンタのことでいっぱいなんだよ。抱いたら、思ったより線が細くてビックリしたとか。前髪を左右に分けるだけで、不安げに肩が揺れていてかわいかったとか。そんな他からしてみれば大したことない記憶が、ずっと頭から離れなくて。」
落合は両腕でめちゃくちゃに髪を掻き毟って、吠える。
「だから、アンタが俺のこと考えなかったとか言われると正直こたえる。意地悪の一つや二つ、仕掛けたくなるんだよ。俺ばっかり、俺だけが偶然出くわした熱に舞い上がって、事故じゃ済まないくらいの大怪我を負っている気がする。」
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