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あー、行きたくねぇー…
店の看板が見えてきて気分が尚更憂鬱になる。
「どうしたの?流記夜、顔怖いよ」
腕を絡みながら歩いてた客に顔を覗かれて焦る。
「あ、ははっ…そんな事ねぇって!」
「そう?」
何とかその場を取り繕って店の中に入ると既にコールで盛り上がっていた。
誰の、なんて聞かなくても分かる。
「葵、すごいね。まだ開店したばっかなのに」
「…ソウネ」
周りのホストに盛り上げられて客とご満悦に笑う姿にイラッとする。
…どうせ、昨日の事なんて一ミリも覚えてねーだろうな。
アイツ、酒飲むと記憶飛ぶしね。
マジクズ!
「私も流記夜に入れてあげるね」
「ありがと」
ま、俺も負けねぇけど。
お礼に抱き寄せてキスをした。
やっぱ女の方がいい。
どう考えても!
店内も満卓になりコールが止まないほど盛り上がりもピークを迎えていた。
俺のテーブルでも今日何度めかのコールが終わってシャンパンを一気飲みする。
「流記夜のラスソン聞けるかな?」
「聞けるっしょ。愛花入れてくれたじゃん、シャンパン」
「ふふ、流記夜のためだもん」
寄り掛かってくる客の肩に手を回しながら葵を見る。
絶対俺が勝つ!
そう心の中で強く思った時、とんでもないマイク放送が店内にかかった。
「一番テーブル、葵にロマネコンティとリシャールのタワー入りました〜!」
「はぁ!?」
タワー!?
しかもロマネコンティとリシャール…!!
「うわ、すご!私初めて見るよ、ロマネコンティとリシャールのシャンパンタワー!」
いや、俺もですけど。
て、ちげー!
「嘘だろ…」
他の奴らのマイクパフォーマンスと共に運ばれてきた二基のシャンパンタワーのグラスたち。
店内には今日一の歓声が上がる。
え、てかマジで?
客誰だよと思って見たら案の定ちはるさんだった。
店の全キャスト、接客してた奴らも葵のテーブルに集まる。
「流記夜行かなくていいの?」
死んでも行きたくねぇ!
「愛花のことオンリーにしたくねぇし」
そう言って誰も見てない隙を狙ってキスをする。
「嬉しいけど…あ」
あ?
俺の背後を見上げる愛花。
振り返るとマネージャーがいた。
「な、なんスか?」
「なんスかじゃないだろ。早く来い」
「いや、俺接客中なんで無理!」
背を向けて愛花を抱き締める。
「お前な…タワー入ったら全キャスト参加の決まりだろう」
嫌だ!
絶っっ対行きたくねぇ!!
「苦しいって、流記夜…!」
そんな愛花の声も無視して離れまいと強く抱き締める。
「いい加減に…「何してんだよ。るき」」
マネージャーの声を遮ってきたのは葵で。
席を離れて俺の前に立っていた。
「愛花、困ってんでしょーが」
「人の客呼び捨てにすんな!」
俺が言い返すと呆れたように息を吐くマネージャー。
「どうしたんだ、お前。いつもは参加してるだろ」
いつもはな!
だけど今日は色々事情がちげぇんだよっ
「流記夜、私は平気だから。それにシャンパンタワー見てみたい」
「でもっ「いつまでも駄々こねてんじゃねぇって。ほら、来い」っ…!」
腕を掴まれて葵に引き寄せられると勢い余ってその胸にぶつかる。
「何すっ…」
「あと、お前メインでコールしろよ」
はぁ!?
「嫌に決まって…!」
即拒否しようとしたら後頭部を抱き寄せられて、耳元にコイツの唇が掠めた。
ちけぇっ…
周りはなぜか黄色い歓声が上がる。
「昨日のコト、バラしていーわけ?」
「なっ…」
コイツ、覚えて…!?
見上げるとニヤリと笑う葵。
「どうした?二人とも」
「なんでもないっス。…んじゃ、全力で盛り上げろよ、るきクン」
「ーっ…」
クッソ…
マジでムカつく!!
渡されたマイクをぶん投げたくなった。
「がんばってね!楽しみにしてるから、流記夜のコール♪」
「…はは」
こうなったらアイツが引くほどやってやるよ!
※シャンパンタワー…シャンパングラスを何段にも重ねてシャンパンを注ぐ事。
※オンリー…シャンパンコール中や混雑時等、お客が席に一人でいる事。
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