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「別にあいつとはそんな関係じゃないから安心していいよ。君のように友達以上恋人未満でもない。っていうか、友達ですらない。ただのクラスメイトだから。ご安心下さい」
はっきり、すっぱり言い切ると、由良は男を一瞥して背を向けた。
校門を出て、少し歩いた所に自宅から送られた車が停まっていて、由良は自分で後部座席の扉を開くと車へと乗り込んだ。
「お帰りなさいませ。レッスン室で宜しいですか?」
「ええ。お願いします」
運転手が聞いてきて由良は短く答えると、後部座席に積まれていたヴァイオリンの入ったケースを膝へと置いた。
学校帰りはほぼ毎日、幼い時から通い続けているヴァイオリンのレッスンへと向かう。
車がゆっくり進行し、窓の外の景色へと目を向けると先程話をしていた男が嬉しそうな顔で歩いていた。
胸のモヤモヤがイライラへと何故か変わって、由良はケースを握る手に力が篭った。
瀧澤の事を考えるといつも怒りが込み上がる。
軽率な男が基本大嫌いだからだろうか。
元々チャラい男と思っていたが、まさしくその通りの男で嫌気がさす。
そんな奴に身体を触れられたと思うと自分の事が許せなくて由良はケースへ爪を立てて顔の形相を怒りに歪ませた。
それを赤信号で止まった運転手がバックミラーで見て、驚いた声で話しかけてきた。
「ゆ、由良様⁉︎いかがなさいました?」
「え?」
「何かお気に召さない事でもありましたか?」
運転手の言葉に由良が言葉に詰まって歯を食いしばった。
気に入らない事?
そんなの……
言うか言わまいか少し悩んだあと、由良は思い切って運転手へ聞いてみた。
「めちゃくちゃ嫌いな人間がいたら、どうします?」
断片的かつ、ストレートな質問に運転手は驚く。
そして、少し考えたあと口を開いた。
「……そうですね。一生会いません。もし、会わなければいけない関係なら、空気のように扱います」
「空気のように扱えなかったら?やたらと絡んでくるんだ」
「む、難しいですね……」
食い込み気味に助言を求めてくる由良に運転手はそうだなと、また少し考えてから口を開いた。
「無の存在として接しますかね……」
「無?」
「はい。絶対に自分の感情を出さず、どうでもいいように接するんです。本当に自分に興味がないと分かれば相手も絡む事もなくなるでしょう?」
苦笑いしながら、月並みな解答で申し訳ないと謝る運転手に由良はヴァイオリンのケースを抱きしめて頷いた。
なるほど…、無か……
自分は今までなんだかんだと瀧澤に翻弄され、リアクションを返してきた事を思い返した。
告白されて驚き、いきなり待ち伏せされて驚き、家に来られて驚き、襲われて驚いた。
驚きの連発だが、今後はもう驚くものかと、由良は大きく頷いて心のモヤモヤとイラ立ちを払拭させた。
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