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名前 8
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〔碇流side〕
あいつにとって1番身近で常に感じているはずの“恐怖“を荒療治で気づかせて以来、あいつは自分を取り巻く全てに怯えた様子を見せるようになった。
小さな物音や携帯の鳴る音でも緊張して瞬きが増える。
俺を見たら固まり、近づけば青ざめて触ればガタガタ震える。
表情は全然変わらないから、些細な変化を読み取るしかない。
今まで気づいていなかったものを一気に感じるようになった反動なのか、
ずっと緊張状態が続くストレスで体力を使い過ぎて睡眠時間が増えたように思う。
かくん、と頭を落とすと慌てて顔を上げて俺の顔色を伺う。
勝手に眠ると罰を受けてきたのか「眠たくなったら寝る」という考えはないみたいで、限界まで意識を保とうとしていた。
寝ろ、と一言言えばそれに従って寝るんだろうが、それじゃただ命令を聞いて動いてるだけで意味が無い。
俺の家に来てから1度も自分の意思で行動する事が無かったこいつが、あの日倒れる前に一瞬だけ柔らかい表情を見せた。
人形みたいに空っぽに見えたこいつにも感情はあったのか、なんて当たり前のことにその時気がついて。
あの時からあいつがマシロに見えることはなくなった。
あいつを1人の人間として認識した途端、急にすぐにでも死んでしまいそうな脆い生き物に見えた。
もっと年相応の顔が出来るようになればいい、と柄にもないことを思いながらそいつの寝顔を眺めていた。
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