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66.スコア1
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仕事が立て込んでいた。
もんもんしている。
圭一郎との競演を終え、忙しさは激しさを増した。
評価されたのだ。
あの演奏会。
ただの親の七光りではないと実証したのだ。
二世タレントにされるところだった圭。
テレビ出演は一切お断りだけど、演奏した曲がCMで起用されたりするようになった。
それに、演奏会の依頼は世界を超えてやってきた。
「ガラコンツアーの前になんでこんなに忙しいんだよ」
新幹線の中でイライラの圭は高塚を睨む。
「そう怒らないでよ。時代がキミを放っておかないってことなんだろう?」
「んな訳あるか」
高塚が買ってきてくれたお弁当。
もう飽きた。
外食なんてまっぴらだ。
「蒼の手料理が食べたい~」
じたばた騒ぐ。
「し~!なに言ってんの!子どもじゃないんだから」
「だって。蒼にもしばらく逢っていないじゃないか!」
「しばらくって3日ばっかりでしょう?」
「それがしばらくって言うんだよ」
「もう少しで帰るんだから。そんな駄々こねないで」
困ったものだ。
彼の蒼への執着は強い。
蒼と離れて平気なのは1泊が限度だ。
それ以上になると、気難しくなるし、料理には手を付けないし、暴れて八つ当たりをする。
自分の仕事を蒼にやってもらったらいいのではないかと思うくらいに、高塚は不幸の連続だ。
もう少し。
後1時間。
駅に着くのが40分後。
駅から自宅までが20分。
早く過ぎてくれ。
1時間。
高塚はぶうぶう膨れて暴れている圭を取り押さえつつ、そう祈るしかなかった。
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