アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
12.
-
その日から、一千花の家の庭で千尋の剣の稽古が始まった。
縁側に座る一千花が出す指示や助言はどれもとても的確で、それだけでも一千花と千尋との力の差は歴然としていた。
一心不乱に力技で押し切ろうとする千尋と人の動きを計算しつくし、まるで演舞のように華麗な技を使う一千花。
二人の戦い方にはかなり違いがあったが、それでも一千花に剣技を教授された千尋は以前との違いが目に見えて分かるほど剣の扱い方が上達していた。
そんなある日、一つの風の噂が千尋達の耳に入る。
なんでも、街中で富豪や名家を狙った事件が多発しているらしい。
夜道を襲われた者もいれば家を襲撃された者いて、金目当てとは言われているが正体は未だに不明のようだ。
手練揃いの彼等に護衛もろくに歯が立たず皆警備を強化しているという。
そんな中一千花はそんな噂すら知らなかったらしく千尋から話を聞いて目を丸くした。
「へぇ、世の中も物騒だな」
「お前他人事みたいに言ってるけどなぁ、狙われてんのはお前達名家とかの金持ち連中なんだぞ?」
「そうか、そう言えばそうだった」
呆れるほどに落ち着いている一千花を見て千尋はやれやれと首を振る。
「たく…、もう少し危機感もてよな。本当に何かあったらどうするんだよ」
「千尋心配性。俺はこれでも武士の一族だぞ?いくら相手が手練で家を焼かれたとしても、自分の命くらいは守れるよ」
「どうだか。その身体じゃまともに動けないくせに」
「大丈夫だよ、心配してくれてありがとな」
一千花はそう言って小さく笑う。
千尋はその笑顔に逆に不安になりながら大きな溜息を漏らした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
96 / 257