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「____終わったぞ、優斗」
刑事や医師との手続きをなにもかも亮雅さんがやってくれていた。
事件から数日で退院できることになり、しばらく通院して様子を見るようだ。
身支度を整えていると頭をポンとなでられて呆然とする。
「……なんですか」
「なぁ優斗……ごめんな」
亮雅さんは弥生さんの父親とは無関係だが、以前関わっていたことで責任を感じていた。
俺は浮気されていなかった事実が心底嬉しいのに、それ以上に気を遣わせてしまっている。
「俺は男ですよ。そこまでナイーブじゃないです……それに亮雅さんを憎んでなんかいません」
「ああ、分かってるよ。気持ち的な問題だ」
「……じゃあ、キスしてください」
「は?」
「そ、そんなに気になるなら……キス、してください。俺はそれだけで安心できます」
自分でなにを言ってるんだろうと頭を抱えそうだ。
亮雅さんは俺を一番に大切にしてくれていた。
もうそれだけで十分すぎるくらい幸せで。
「……キスぐらい、いくらでもしてやるよ」
「んっ」
腰を抱き寄せられ、重なった唇のすき間から舌が挿入される。
恐怖心から解放された反動で性感帯が敏感になり、ビクビクと腰が揺れた。
「ふ、んぁ……んん」
亮雅さん……亮雅さんが好きだ。
大好きすぎて、おかしくなる。
「へ、ぁ……も、だめ……」
「バテんの早すぎ。頬、痛くないか」
「痛い、けど……大丈夫です」
「はぁ。本当に、心臓に悪いわ……」
「……」
あったかい。亮雅さんの腕の中。
肩に顔を埋めてそっと目を閉じる。
「幸せ……です」
「…………そうか」
背をなでる手に力が入る。
幸せを実感するとともに、亮雅さんが苦しそうな顔をする。
きっとそれは過去の記憶への後悔なのだろう。
でも、俺は幸せだ。
亮雅さんがここにいるだけで、陸が笑ってくれるだけで、生きていたいと思うんだから。
「ああ、いらっしゃい」
退院してすぐ、父に会いに行った。
見舞いに来てくれる予定だったが、思っていたより早く退院できたから事件以来初めて会う。
「……これはひどい怪我だ。なにも気づいてやれなくて、本当にすまない」
「俺も突然だったから、父さんに言える余裕もなかったんだ。でも……ずっと会いたかった」
「母さんには、本当に言わなくていいのか?」
「うん……ごめん。言わないでほしい」
「そうか。友人は昼間いないけど許可はもらってるから、ゆっくりしていきなさい」
「ありがとう」
軽い足取りでキッチンに立った父は冷蔵庫から飲み物を取っている。
「……父さん、あのさ」
「ん?」
「…………俺の恋人、男だって知ってる、?」
知っているだろう。
母が俺はゲイだといつも言いふらしていたんだから。
「あぁ、知っているよ」
「っ、その……反対しないんだ」
「どうして反対するんだ? たしかにその相手が変な男だったら父さんも許してなかったかもしれない。でも克彦から聞いた限り、心配いらない気がしてね」
「克彦、が?」
「うん。克彦は子どもの頃から優斗が大好きだったからなぁ、あんなに弟想いの克彦が言うんだから間違いないと思ったよ」
……なんだよ。
俺には気をつけろとか言っていたのに。
結局、認めてくれていたんだ。
「男同士でも……俺は俺、だから。もし反対されても別れたくない」
「ふ、そうか。よほど大切にされてるんだな……病院でも付きっきりだったんだろう?」
「あ……うん、ちょっとは休んでって思うけど。生真面目だから」
「らしいな。まさか優斗が会社の上司と付き合うとは予想もしてなかったよ」
「は!? なな……なんで、知ってるの」
「もちろん克彦だよ」
あいつ……でも、まぁよかった。
父さんは分かってくれていたんだな。
段々と気持ちが落ち着いて、暖かく感じてくる。
亮雅さんたちに出会えたことで失ったものもあるけれど、それ以上に人の温もりを知ることができた。
出会ったことに後悔なんて、ひとつもない。
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