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「かしゃんのこいびとぉー」
「陸……そういうのは大きい声で言わなくていいから」
誠くんはすでに恋心が分かっているようだが、陸にはそれがまだ分からないらしい。
好きな人という意味も実際分かってない。
「かしゃん、つぎはいつ会える〜?」
「30年後だ」
「?」
「本気にしたらどうするんですか」
「陸があいつに懐いてるのが俺にはよく分からないんだけどな……」
亮雅さんが「怖くないのか?」と聞くと陸はブンブンとかぶりを振った。
「かしゃんはねえ、陸にプレゼントくれたっ。たんじょーび」
「え? そうなんですか?」
「あー……そういやポストに投げられていたな。陸宛てに」
…………おい。
なんだ、結局陸のことが好きなんじゃないか。
俺が教えたからだろう。
「本当に素直じゃないですよね……」
「お前が言うな」
「俺は、本音しか言ってません」
「嘘つけ。朝と夜とじゃ人が違うだろ」
「ッ! そ、そんなの記憶ないんで」
へえ、と目を細めてこちらを見てくる亮雅さんが憎らしい。
陸がいるのに変なことを言わないでくれ……っ!
「怒んなよ。可愛い顔してんのに」
「可愛くないです。あと、子どもじゃないんで。そうすぐになでないでください」
「陸もなでなでしてっ」
「お前はいつでも甘えん坊だなぁ。優斗にその技分けてやれ」
「……」
なんだよ技って。
陸は小学生なんだから甘えたって可愛いだけだ。
社会人で男の俺が「頭なでて」なんて言ってたら気色悪いの一点張りだっての。
「プライド高けえよな」
「……男なんで」
ムッと口を尖らせていると、皿の上にウインナーが置かれた。
「ゆしゃんもウインナーあげる〜」
「え、あ、ありがとう」
「ブフッ」
「なに笑ってんですか」
「いやぁ、別に?」
なんだかバカにされているようだ。
ムカつく……
「お星さまでてきた!」
陸が空を指さして、反射的に見上げると紫味を帯びた空にいくつもの星が出ていた。
雲の少ない空はよく輝いて見えて綺麗だ。
「きーらきーらぁ」
「……」
今まで感動1つもできない自分だと思っていた。
でも、空を見上げて抱いた胸の高鳴りは感動以外の言葉が思いつかない。
空腹を満たしたところで、草の上にシートを敷いて3人で横になった。
もう辺りはすっかり薄暗くなっていたが、星の輝きのおかげかいつもより明るく見える。
「陸、それ持ってきたんだ」
「もってきた! お星さま」
亮雅さんの母親がくれた星型のLEDライト。
それを大事そうに抱いている陸をぼんやり眺めていると、腕に軽く抱き寄せられてドキッとした。
「夜は涼しくていいな」
「……そうですね」
俺の好きな匂い。
思えば、いつの間に亮雅さんのことを好きになっていたんだろう。
あんなに苦手で避けてばかりだったのに。
隣がやけに静かでふと顔を向けると、案の定陸は眠りについていた。
寝ることと食べることは陸にとっての娯楽でもあるようだ。
「陸、寝ちゃいました」
「すげえよな、陸はどこでも寝れんぞ」
「ふふ、本当に可愛いですよね」
「……最近、自然と笑えるようになったな」
「あ……」
優しい視線を向けられて恥ずかしくなる。
腕をそっとなでられると下腹部に微かな熱を感じた。
「跡も消えてるし、綺麗だ」
「ありがとう、ございます」
「自分を傷つけて楽になるならそれを否定はできないが……俺にとって優斗は生きがいなんだ。自虐以外の最善策を探そう」
「はい」
もう、傷つけたくない。
亮雅さんが愛してくれる自分自身を粗末に扱うことはできない。
まだまだ不安ばかりだが、この人といれば何だってできそうな気がする。
「寝れそうか? 少し仮眠をとっていいぞ」
「っ……」
「俺がいるから大丈夫だ。なにも怖くない」
「…………は、はい」
根性論のようなものではなく、実際亮雅さんの腕に抱かれていると安心する。
目を閉じてギュッと服を掴んだ。
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