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~昴流side~
「くーちゃん、話が……」
「空夜。」
廊下に航が見え、昴流はすぐに教室から出た。
空夜を呼び止める声に被せて、話に割り込んだ。
「京が呼んでる。」
「あっ、えっと……」
「すぐ。」
戸惑う空夜を、半ば無理やり教室に引き込み、自分は廊下に出た。
「……なんのつもり?」
「それはこっちのセリフだよ。」
「話すのも邪魔するなんて、フェアじゃないと思うけど。」
「嘘ついてるやつにフェアを語られたくねぇんだけど。」
バチバチと火花でも出ていそうな雰囲気は、周囲の朝の爽やかさとはかけ離れている。
「それについて君に話す義理はないよね?大体それを責める権利があるのもくーちゃんだけだよ。君は関係ない。」
「偉そうに説教か?」
「謝る機会ももらえないわけ?」
「それはお前次第だよ。」
春陽からの情報で、天条家の次男だということはわかった。
しかしなぜ隠していたのかまではわかっていない。
「表面上謝るだけならこれ以上関わるな。」
「そんなわけないだろ。君、くーちゃんが好きなの?」
「はぁ?」
「そうじゃないならこれ以上邪魔しないでくれない?」
「航くん?」
さらに口を開こうとした航の声より前に、可愛らしい声が届く。
「どうしたの?あれっ、木之本くんだ。おはよう。」
「……はよ。」
「2人とも何かあった?顔怖いよ……?」
「……何もないよ。」
古森美紅は心配そうな顔をしたが、航は誤魔化した。
こういうところが信用ならないと昴流は思っている。
「航くん、今日も部活?」
「……うん。今日は遅くなるから、先に帰ってて。」
「わかった。」
ニコリと笑った美紅は教室に入っていく。
「……お前のやってることは中途半端なんだよ。空夜のことも、古森のことも蔑ろにしてんだよ。空夜に謝る?その前にはっきりさせろよ。謝ってもこのままグダグダ長引くだけだろ。」
「それを決めるのは俺だよ。」
航はそう言って、横を通り過ぎていく。
「木之本、おはよう。」
「あ?あー、おはよう。」
「どうしたんだ?陸玖待ちか?」
朝練を終えた悠平が話しかけてきた。
この様子だと陸玖ももうすぐ来るのだろう。
陸玖に航のことが知られるのはさすがにまずい。
「いや、なんでもねぇよ。」
不思議そうな顔をする悠平は放って、昴流も教室に入った。
*
「空夜くん、だったよね?」
ニコッと笑った美紅が、昼休みに空夜に話しかけているのを昴流は見た。
ちょうど京とダンスの話をしていて、近くにいたのだ。
「う、うん。どうかしたの?」
「ちょっと話したいことがあって……」
「話したいこと?」
「うん。ここだと話しにくいことなの……一緒に来てくれる?」
「えっと……どうして、俺に?」
「空夜くん、航くんと仲良いんだよね?それで、空夜くんにお願いしたいことがあって……」
「航に直接、お願いしたら?」
「直接言ったけどダメだったの……だから空夜くんにも助けて欲しくて……ダメかな?」
「美紅?空夜くんとどうかしたの?」
転入生だというのに、すでに打ち解けている美紅と、困った様子の空夜を見て、近くにいた間宮琳が話しかけてきた。
「あ、ううん、なんでもないの。ちょっと空夜くんとお話したいことがあったんだけど……」
「話?」
「……いいよ、えっと……どこに行く?」
「ありがとうっ!人があんまりいない所がいいな……」
美紅にそう言われて、空夜は美紅と2人で屋上に行った。
昴流は、美紅に悪気がないとしてもモヤモヤした。
「あれ、大丈夫かな……」
京は少し心配そうに空夜の背中を見ている。
「まあ、古森は空夜になんかするってことはないと思うけど……」
「でも、古森さんに悪気がなくても、空夜くんが傷つくような話だったら……」
「俺らが行く方がややこしくなりそうだからな……とりあえず帰ってきてから話聞くか。」
「そう、だね……」
まだ心配そうに顔を俯かせた京の頭を軽く撫でる。
「大丈夫、空夜はそこまでヤワじゃねえよ。まあ、この前はちょっと凹んでたけど……」
空夜が美紅を避けるのは気まずいからだろうし、美紅が嫌いなわけでも、話すのが辛いからでもない。
確かに話の内容によっては、と思う部分もあるが、美紅に悪意がなければ空夜はそれなりに受け止めるだろう。
「京は優しすぎ。俺が巻き込んじゃったけど、お前も文化祭準備で忙しいんだし、あんま気にしすぎんな。」
「う、うんっ……」
パッ、と顔を逸らされてしまって、同級生の頭を撫でるのはあまり良くなかったかな、と手を離す。
クラスの中だし、恥ずかしい気持ちにさせたかもしれない。
「きりちゃん!きのちゃん!昼飯食おーっ!」
楽しそうにやってきた兼と、後ろからついてきた光樹が近くの椅子を持ってきて座り、京と昴流も昼食の用意をすることにした。
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