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~空夜side~
「逃げたい。」
「……おはよう、お兄。」
「今すぐ逃げだして隠れたい、飛行機を手配しよう。」
「ちょっとちょっと、落ち着きな?」
朝、起きてきた春陽は顔を覆っていた。
「なんで夏紀さん呼ぶの、母さんのいけず……」
「いけずって……春陽、昨日のこと覚えてないの?」
「覚えてるから逃げたくなってる……」
「だったらあれだけ駄々こねて、夏紀くん呼んだんだからわかるでしょう。」
「気絶させて寝かせてよぉ……」
「そんな無茶苦茶な。大体、夏紀くんに一方的に怒って、不貞腐れてるのは春陽でしょう。さっさと仲直りしな。」
「母さんたまにすごーく冷たくなるよね……」
べたっ、と机に突っ伏した春陽は深いため息をついた。
「夏紀くんは?」
「まだ寝てるよ。」
「後でちゃんと謝りなよ。」
「そうだよお兄。」
空夜のために怒ってくれるのは嬉しいけれど、航とのことは空夜の問題だ。
それが原因で夏紀と春陽が揉めるのは嫌だ。
「俺はもう平気だから。こっちはこっちで解決する。」
「それとこれとはまた別問題というか……確かに発端は空夜のことかもしれないけど、違うんだよ。俺の気持ちの問題。」
「でも言い過ぎたんでしょ?」
「うっ……それは……」
あからさまに落ち込んでいた春陽の様子を見れば、上手く話せなかったんだということくらいは空夜にもわかった。
「謝らないにしても、ちゃんと話しなさい。」
恋がそう言って、春陽に朝食を出す。
「はぁい……」
さすがに春陽も話さないといけない、というのは分かっているようで渋々返事をした。
「俺そろそろ行ってくるね。」
「行ってらっしゃい、気をつけてね。」
「空夜行ってらっしゃいー。」
少し早めに家を出る。
文化祭関連のプリントを提出しなければならないので、いつもより早めに学校に行くことにしていた。
「あ……」
校門のところで、偶然にも航と会った。
部活以外で顔を合わせていないので、2人きりで会うのは久しぶりだった。
「……おはよう。」
「あ、お、おはよっ。」
挨拶すれば、航は慌てたように返してくれた。
しかしその後は無言になってしまう。
文化祭の準備はどんどん忙しくなるし、早めに航と話す時間を設けなければならない。
(航からは言い出してこないよなぁ……俺が待ってって言ったし。)
「あのさ……」
「うん?」
「航が空いてる日ある?」
「えっと、話、聞いてくれるってこと?」
「うん、そう。」
「そしたら、明日の朝は?」
「朝?」
「うん、放課後はいろいろあって……ごめん。」
「ううん、平気。明日は俺も放課後に予定あるし……じゃあ、明日の朝……7時半とかでいい?」
8時になれば登校してくる人が増え、話をしづらくなる。
「うん、大丈夫。」
「じゃあ、また明日。」
「うん。」
下駄箱について、ぎこちなく会話を終えて別れる。
話を聞いて、どうなるのかわからない。
空夜は今も、航に特別な感情がある。だから美紅とのことが気になるし、航と話をすることを恐れている。
けれど、このまま逃げていても仕方がない。
向き合って、話をして、その上でどうするのか決めなくてはならない。
(……でも、明日の放課後のダンス練習した後、京くんと話す時間くらい、あった方が気持ちが楽だな。)
京に声をかけておこうか、迷惑だろうか、と考えていると後ろから声をかけられた。
「はよ。」
「おっ、おはよう、昴流。」
「……どうしたんだよ、こんなとこで。」
「……って、あれ?京くんもいる……」
「あ、うんっ、おはよう。」
「一緒に来たの?」
「あぁ、最寄りで会ったから。で、空夜は何してたの。下駄箱で。」
怪訝そうな昴流に、先程まで航といたことと、明日の朝話をすることになったことを伝えた。
「ふーん……じゃ、明日のダンス練の後、京と合流な。すぐそこのファミレスで。」
「え?!」
「わかった、俺も部活終わったら連絡するね。」
「え?!?!」
空夜に有無を言わさず、2人は明日の放課後の予定を決めてしまった。
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