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から回る平常心
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俺しかいない静かな部屋にカチカチと時計の秒針が進む音が響く。
さっきまでつけていたテレビも、何となく見る気になれなくて消してしまった。
さっきも見たばかりなのに、再び時計を確認する。
午後7時すぎ。
いまだに蛍汰は帰ってこない。
...いくら何でも遅すぎじゃないか?
今日のことを気にしてるんだろうか。帰りづらくて帰ってこれないんだろうか。
ぐるぐるといくら考えても、答えはでてこない。
「...どうしよう」
帰ってきた蛍汰と何を話そうか、ずっと考えていただけあって逆に帰ってこないとすごく戸惑う。
やる事がない。
学校まで迎えに行こうか、なんていう考えさえ出てくる始末だ。
友だちの家にでも遊びに行ってるんだろうか。
(...それならそれで、連絡しろよ)
いや、連絡しづらいよな。
暫くずっと自問自答を続けていると、キィ、と玄関の扉が軋んだ。
「ただいま」
聞きなれた彼の声が聞こえる。
かえってきた!
ホッとしながら、あわててテレビをつける。
(平常心、平常心だ)
「優真、ごめんね。遅くなっちゃった」
「別にいいよ」
全然気にしてないよ、とテレビを見る。
チラリと横目で蛍汰の顔を見れば、眉をたらし「そっか」と呟いた。
(あ....)
その表情を見て、すぐに間違えたと思った。
「な、何やってたんだよ。こんな時間まで」
まずいと心を焦らせながら、質問をかえす。
蛍汰は着ていたブレザーを脱ぎながら困ったように笑った。
「新入生歓迎会に出てくれって委員に頼まれちゃって。みんな悪ノリするから断るのに時間がかかったんだ」
「そ、そうなんだ」
蛍汰、出ないんだ。
心の中でぽつんと思う。
それでもなるべく顔に出ないようにと、ついつい返事が素っ気なくなってしまった。
(やばい、つい..)
絶対蛍汰はまた傷ついたような顔をしてる。
何て返せばよかったんだ。
いつもなら、何て返す?
(あれ....)
俺、昨日までどうやって蛍汰と喋ってたっけ?
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