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まだ知らぬ想い9
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「ギルヴィス王の未来視の内容と状況を照らし合わせた結果、ロステアール・クレウ・グランダって男の存在自体を無いものにするのが一番安泰だろうって話にまとまったんだ。そんで、ロステアール王はすぐにシェンジェアン、薄紅の国に向かった。そこでランファ王から最上級の幻惑魔法を掛けられて、後は知らねぇ。ランファ王なら、時間をかければ対象が本来の自分を忘れるくらい強力な目眩ましを掛けられるから、多分、全くの別人としてどっかで生きてる。ただ、対象が死ねば魔法が解けるように設定したらしいし、解ければランファ王には判るって話だから、そういう連絡がないってことは、生きてると判断して間違いない」
「…………それって、あの人が、ずっと、あの人ではない誰かになり続けるってことなんですか……?」
やや震える声が、そう問いかける。それに対し、黄の王は首を横に振った。
「いや、帝国との一件が終わり次第、元に戻すさ。確かに魔法が強力すぎて、対象によっちゃ自我が吹っ飛ぶ可能性もないわけじゃないが、ロステアール王の精神力ならまず大丈夫だ。魔法が解けたら全部元通り。これで安心できるか?」
「…………い、え、安心、できません」
小さな声ではあるが、はっきりとそう言った少年に、黄の王は片眉を上げた。この少年はあまり自己を主張するようなタイプではないと思ったのだが、それでも譲らない姿勢に少し驚いたのだ。
「だって、あの人が、死んでしまうかもしれないんでしょう……?」
吐き出された言葉が、無様に揺れる。
赤の王は強い。それは確固たる事実だ。その赤の王の命を脅かす脅威となると、果たして円卓の連合国だけで対処できるものなのだろうか。その疑念が、少年の不安を駆り立てるのだ。
「……あの人、すら、敵わないような相手、なんて、……なら、……あの人、は……」
嫌な想像は少年を蝕み、声だけでなく、身体まで震え始める。
死は終わりだ。死んでしまえば、何もかもがそこで断絶する。あの美しい赤の王だって、死んだらそうなってしまうのだ。そしてそうなれば、あの声で少年を呼ぶ者は、もう二度と現れはしないだろう。
それは、こわい。
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