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奇跡の軌跡2
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楽しそうだった皆さんの顔が、スローモーションのように固まるのが見えて、申し訳なくて、謝るしか出来ませんでした。
「本当にすいません。」
「ちょ、ちょっと待って下さいっス!」
今にも崩れそうな笑顔の黄瀬君が叫んで、辺りは一気にシンとしました。
「なんで、っスか?バスケ、嫌いになったんスか?」
嫌いになるわけがありません、と叫びたかった。それでも、それを言ったらまた問い詰められそうで、僕はその理由から話し始めました。
「もうこの足では、バスケが出来ないんです。」
思い出すのは、目が覚めた時に医師の方と交わした会話。
『ところで黒子君、君は、バスケをしているそうだね。』
「え……?あ、はい。バスケ部に所属していました。バスケは好きですし、これからも続けていくつもりです。」
僕の答えに眉を寄せる医師。なんだかよくない予感がして、思わず布団を握り締めました。
『本当に残念だが、それはできない。』
よくない予感は的中した。
『木材の下敷きになった時に君は右足を複雑骨折したんだ。…かなりタチの悪い折れ方でね。今後、歩くことに支障はないと思うが、走るのは難しいだろう。もし、無理にでも走れば……
二度と歩けなくなる可能性もある。』
それはつまり、今後一生バスケが出来ないということで。
医師の方の真剣すぎる目を見てしまえば、「嘘だ」とは言えませんでした。
「そ……ですか、……」
『さっき来ていたお友達はバスケ仲間かな?辛いようなら、私からお友達に言うこともできるが、どうする?』
一瞬、もし言った時のことを想像しました。
もし伝えてしまったらきっと、彼らは僕の前でバスケの話はしなくなるでしょう。
そして、きっと僕に遠慮する。
それだけは、どうしても、避けたかった。
「僕から言います。なので、彼らには言わないでおいてください。」
『……わかった。』
医師の方は、全てを察したように頷きました。
思い出したあと顔を上げれば、やはり全員気まずそうな、申し訳ないような顔をしていました。
「黒子……俺は…」
特に酷い顔をしているのは緑間君で。
確かにその怪我の原因は緑間君を庇ったからで、一番酷い顔をしているのは納得できました。
「そんな顔しないでください。」
でも、君たちには笑ってほしい。
「確かにバスケをすることは出来なくなりました。確かに辛いです。でも、それでも僕はバスケが好きです。」
僕が何を言おうとしているのか理解できないようで、それぞれ複雑な顔をしている皆さん。
きっと、高尾君なら分かったでしょうと、ふと思いました。
──だって僕は、根っからの「バスケ馬鹿」ですから。
「だから、バスケから離れるつもりはありません。マネジャーとしてでも、アドバイザーとしてでも、何としてでもバスケに関わります。」
だから、遠慮なんて絶対にしないでください。
そう言うと、皆さん全員揃って破顔一笑しました。
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