アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
rev .12
-
一晩中大悟を抱いて満足したシラサカ。色々済ませると朝になっていた。余程疲れたのか、大悟は後処理の最中に起きることもなく、眠り続けていた。そんな彼の寝顔を見て、ニヤニヤするのがシラサカの日課でもあった。
ハニーの寝顔を見ると、日常が戻ってきた気がするぜ。
至福の時間を邪魔するかのように、ベッドサイドに置いてあるスマートフォンが震えた。こんな時間に誰だよと独り言を垂れ流してから、電話に出る。
「サカさん、おはよ。朝早くにごめんね」
昨日帰京したマキである。忘れ物でもしたのだろうか。
「カナカナまだ寝てるよね? 先に話したいんだけど、ホテルにいるから、フロントまで来てもらえる?」
「まだ大阪にいるのかよ」
時刻は午前六時。始業時間までに東京に戻ればいいと言われていたはずだが、まだ大阪にいるのなら無理であろう。
「僕、大阪居残りになったんだ。そのことも含めて話すから」
マキの話し方からして、電話で済む話ではないらしい。わかったと言って電話を切ると、シラサカはホテルの名前が入ったメモ帳に「居残りになったマキと一緒だから起きたら連絡して」と書き残し、わかりやすい場所に置く。身支度を整え、すやすや眠る大悟の額にキスをして部屋を出た。
エレベーターでフロントに辿り着くと、マキは大手コーヒーショップチェーンの紙袋片手に渋い顔つきで立っていた。
「朝早くからごめんなさい」
「謝らなくていい。居残りってことは、おまえも泊まってんだろ」
決まった時点で連絡することも出来たはずだが、それをしなかったのは自分達を気遣ってのことだろう。
「うん。お部屋で話していい? サカさんの分のコーヒーも買ったから」
マキの案内で彼の部屋へ向かう。シラサカは最上階のスイートルームだが、彼は階下のシングルルームだった。購入してきたコーヒーをシラサカに手渡し、室内の応接セットの椅子に座るよう、勧めた。
「居残りってことは仕事か?」
シラサカは椅子に座り、温かいコーヒーを一口飲んでから言った。
「そう。新幹線乗る寸前で連絡が来てさ。標的がびっくり、あのタヌキさんだよ」
「は? タヌキ?」
ハナムラはいつから動物も相手にするようになったのか。いや、そんなはずはない。
「カズ君流に言えば、副タヌキになるのかぁ」
「府警副本部長の田中かよ!?」
まさかの人物に、シラサカは目を丸くした。マキはこくりと頷いて言った。
「何度も確認したけど、間違いなかった。この依頼、草薙が言い出したことでボスも承知してるんだって」
依頼者を聞いて二度びっくりである。草薙が同業者を消す依頼を出したのは初めてだったから。
「経歴には、気になる点はなかったように思うが」
田中の経歴はクロードが調べており、ハナムラが動くような問題点はなかったはずだ。大悟とカズミの手前、クロードが話さなかったのなら別だが。
「そのことなんだけどぉ、タヌキさん、サカさんに目付けたでしょ。それが原因みたいよ」
「私情入りまくりじゃねえか。そんなんで仕事を引き受けていいのかよ。レイは承知したのか?」
ハナムラの仕事は依頼を受けて人を殺すことである。悪人とはいえ、人ひとりの命がかかっているため、私情は厳禁となっており、どんな依頼でも情報屋のレイに預けて精査した上でゴーサインが出される。本人は守秘義務だからと多くを語らないが、レイの時点で弾かれる仕事もそこそこあると聞いている。
「みたいだね。契約不履行以外は変えられないって言ってた」
基本的に受けた依頼を取り消すことはしないが、契約不履行になれば別である。とはいえ、これも万に一つあるかないかという確率だ。
「契約不履行ってウチに危害が加わるときとかだろ。今の状況からして、絶対当てはまらねえぞ」
そうなんだよねえと言って、マキは肩をすくめる。シラサカは田中によって大阪に足止めされているし、大悟のことも気にしている。田中に危害を加えられているのは、むしろ自分達(ハナムラ)の方である。
「バラすのは一週間以内、契約不履行の精査はカナカナとカズ君に頼むようにって言ってた」
「おい、ハニーやカズミも関わらせるのかよ!?」
「俺がゴーサインを出した案件を覆すんだ、他の人間がやるしかないだろうが」
抜群のタイミングで割り込んできたのはレイの声だった。マキがごめんなさいと手を合わせ、テーブルにスマホを置いた。言うまでもなく、画面にはレイの姿があった。
「そもそも、なんでこんな仕事を請けたんだよ」
突然割り込んできたレイに驚くこともせず、シラサカは言った。話は部屋でとマキが言ったときから、レイの介入は予想していたから。
「草薙だけなら断ることも出来たが、ボスがやれと言った以上、どうにも出来ない」
ハナムラの情報統括を仕切るレイであっても、花村の命令を無視するのは難しい。勿論それはシラサカにも当てはまる。
「てか、依頼自体に無理があるよね。なんか契約不履行にしたいように見えるし」
マキが言った。それはシラサカが思っていたことでもあった。
「田中は草薙とハナムラの関わりを知っている。あいつが口を滑らせれば、とんでもないことになるぞ!?」
シラサカは府警の連中に顔を見られて言い逃れ出来ないし、シラを切り通せたとしても、岡崎に火の粉がかかるだろう。出来ることなら彼を手にかけたくない。それはマキも同じだろう。
「そうなったらバラせってことだろう。おそらく、草薙は田中をわざと追い込もうとしている。ボスもそれをわかってやっている」
この言い方からして、レイも真意を測りかねているようだ。
話が行き詰まったとき、シラサカの携帯が震えた。画面を見なくてもわかる、これは大悟だ。
「ハニーから連絡だ。ここへ呼ぶか?」
「カナカナだけじゃなく、カズ君にも話さなきゃだから、ここじゃあ手狭だよねえ」
マキの言葉に頷いた後、シラサカは電話に出た。
「おはよ、ハニー。大事な話があるから、部屋にカズミを呼んでくれ。俺もすぐマキとそっちに向かうから」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 67