アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
rev .23
-
宿泊先のホテルの部屋に到着した大悟は、すぐさまKに連絡を入れた。
『ナイスタイミングだよ、ハニー。カズミの部屋に来て』
電話越しの声は元気そうである。ひとまずほっと胸を撫で下ろす大悟であった。
「わかった。じゃあ、マキと岡崎さんも一緒に……」
『あー、オッサンは無理だから、マキに見張らせといて。ひとりで来られる?』
了解と返事をし、マキと岡崎には待機をお願いしてから部屋を出てエレベーターに乗り込む。
今は良くても、後で悪くなったりしないかな。
岡崎への冷たい態度も、大悟への過保護体質もいつも通りだが、Kには撃たれても平然としていた過去がある。医師の松田から「痛覚が麻痺している」と断言されるくらいだ。K自身が異変気づくときには、かなり進行してからになるだろう。
大丈夫だよね、俺を置いて行ったりしないってKは言ってたし。
そうこうするうちに、藤原の宿泊階に到着する。迎えにきたらしいKがエレベーターホールにいた。
「ごめんね、ハニー、ひとりにして」
Kは大悟を右手で軽々と抱き上げた。彼の声を聞いて、体温を全身で感じて安堵する。
「Kこそ大丈夫なの?」
「うん、俺は元気だよ」
「でも、変な薬を打たれたってマキが!?」
「それはそうなんだけど、とにかく元気だから。続きは部屋で話そうか」
Kは大悟を抱いたまま、カードキーを所定の場所に翳した。まもなく自動ドアを開き、フロア内に入る。向かって突き当たりの右側が藤原の部屋だ。
エレベーターを動かすカードキーは、宿泊フロアとフロント階以外は止まらない仕組みになっている。Kと藤原では階が異なるが、レイがまとめて予約を取ったこともあり、お互いの部屋を行き来出来るようになっていた。
「そういえば、藤原の部屋ってシングルルームだよね? 鍵はひとつしかないんじゃないの?」
カードキーはエレベーター以外にも、室内照明等と連動しているため、持ち出せば室内の電気が切れるはずである。
「カズミに何かあった際の保険として二名分で予約を取ってあるんだと。部屋はセミダブル仕様だから、ふたりで泊まっても問題ないしな」
つまりKは予備のカードでエレベーターホールにやってきたということになる。
「やっぱり凄いな、レイは」
「常人とは考え方が違うんだよな。おかげで色々助かってるけど」
あまり褒めると機嫌を害するのだが、思うところがあったのかKも素直に認めた。
藤原の部屋の前に到着し、鍵の部分にカードを翳せば、カチリと音がして解錠された。
「お疲れさんやで、大悟。大丈夫か?」
部屋に入るや、藤原が駆け寄ってきた。
「大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
藤原と共に中へと進めば、クロードと見知らぬ男の姿があった。
「へー、これが噂のハニー君か。てかさ、めちゃくちゃ若くね?」
Kに抱き上げられた大悟を、男はまじまじと見つめる。
「ハニーに色目使うな。今すぐバラすぞ!?」
すぐさまKが割って入り、大悟の頭をよしよしと撫でる。室内でもこの体勢を変えるつもりはないらしい。
「そんなことしてないじゃん。初めまして、池田といいます」
池田と名乗った男はKの脅しに屈することなく、大悟に笑いかけた。
「Kの知り合い?」
「ただの顔見知り。こんな奴と一緒にしないでね、ハニー」
大悟の問いかけにKは不機嫌そうに答える。
「それはこっちの台詞。俺はあんたみたいな節操なしじゃないからね」
Kと池田は、お互いの事情も知り得ているように見えた。
「ナンバー3から大至急モグリの医者を手配しろ言われたから、桜木の関係者に頼んで紹介してもらった。ケイちゃんみたいなイケメンやな思っとったら、知り合いやったゆうわけや」
争いが一段落したところで、藤原が事の経緯を説明してくれた。彼が言うように、池田もK同様の整った顔立ちをしていた。
「そっちはヤクザ顔のドクターが仕切ってるでしょ。俺はこっちでのんびりやってるわけ」
ヤクザ顔のドクターとは松田のことであろう。池田も彼のことをよく知っているようである。
「すみませんが、俺の名前はハニーじゃないので……」
改めて大悟は言った。
「ハニーはハニーであって、ハニー以外の何者でもないからね」
身内以外にも恥ずかしい呼び名が広まることを阻止したい大悟だったが、Kの言葉に池田はクスクスと笑った。
「もういいんじゃない、ハニー君でさ」
呼び名は諦めるしかないらしい。大悟は気持ちを切り替え、改めて池田に問いかけた。
「あの、Kの体のことなんですけど……」
「見た目通りだよ。採取した血液を検査に出すから最終結果は明日になるけど、異常無しじゃないかな。シラサカは頑丈だしね」
最後の言葉はともかく、医師の見解なら大丈夫なのだろう。心底ほっとする大悟であった。
「それでも、結果が出るまではおとなしくしとけよ。勿論、激しい運動は禁止だからな」
池田のニヤケ顔で激しい運動が何を示すかを察する一同。
「そんなの、するわけないし!?」
Kに抱きかかえられた大悟だけは、顔を真っ赤にして主張するのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
31 / 67