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もう一度、
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「あいつの…汐音ん家の住所を教えてくれ」
短く、だけどはっきりとそう伝える。
声が震えた
握り締める手に力が入る
こんなに緊張するのなんていつぶりだろう?
「……もしかして緊張してるの?」
「…少し」
「ふっ、…相変わらず素直だねぇ」
「そういう瀬良はどうなんだよ? 振り向きもせずに」
「あたしは……
どう、だろう…自分でもよくわからないんだなぁ」
「……………」
俯いた瀬良の後ろ姿に初めて本音を聞いた気がした。
もしかしたら、瀬良も汐音と同じように人との接し方に慣れてないだけなのかもしれない。そう思えた。
「はい、これ」
「…?」
「汐音んちの住所。行き方もこの紙に書いてあるから、電車の中ででも見なよ」
いつから準備してたんだろう…
瀬良のことだ、俺に話を振る前から用意してたに違いない
それはこうなることを見越してというより、"こうなって欲しかった"という願いからのように感じられた
四つ折にされた紙を目の前により一層決意が固まる。
「他の情報はいいの?」
「…いや、いらない。
思ったんだ。本当にそいつのことを知りたいなら自分で聞くべきだって」
「…そっか。なんだか頼もしいなぁ」
「瀬良がそう思わせてくれたんだ、お前のおかげ。
…だから、ありがとう」
素直にそう言うと、瀬良は驚いたように目を丸くしてぱちぱちと瞬きを繰り返した。
瀬良は小さくふっと笑ってから、初めて出会った時のようなへらりとした態度で「なにいってんの」と茶化した。
「ほら、早く汐音のとこ行っといでよ」
「ああ」
背中に受ける痛いくらいの平手打ちが俺を後押しする。
衝撃で足が浮き、そのまま前へと走り出した。
「……お礼を言わなきゃなんないのはあたしの方だよ」
汐音はあたしの"メッセージ"に気付くのかな?
窓から見える、小さくなっていくその人にぽつりと呟いた。
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