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正義感③
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「いや〜しかし俺、学級委員なのに倉橋くんと喋ったこと一度も無かったよね」
気を使っているのか、先程とは違う話題を振ってくる百城。
僕は可愛らしいタコのウインナーを食べながら、そうだね、と一言返す。
「あ…タコのやつ、可愛いね。」
「……僕のお弁当、幼稚園児みたいでしょ?ちょっと恥ずかしいんだぁ」
弁当が体の陰になるように少し隠しながら話す。
「気にする事ないよ。俺のなんか、土みたいな色してるよ、ホラ」
「つ、つち?」
不謹慎な表現に思わず吹き出しそうになる。
覗きこむと、確かに地味な色合いではあったけれど、体に良さそうなバランスの取れたお弁当だった。二段弁当で、一段目はお米、二段目はおかずがいっぱいはいっている。
「茶色過ぎるだろこれ。サラリーマンとか50代くらいのオッサンが食べるやつだよ」
おれまだ血糖値とかコレステロールとか気にする歳じゃないっての、と冗談めいたことを呟きニカって笑う。
「ううん、優しいお母さんだね。健康志向でいいと思うよ」僕がそう言うと、そうかなー?と不満そうに首を傾げた。
その後もう一度僕の弁当を覗く。
「タコさんウインナー、あと2個あるね」
欲しいってことなのかなと思い百城くんの顔を確認する。ちょうど目が合い、またニカっと笑った。その次の瞬間。
「もーらいっ」
百城くんが僕の弁当から、タコさんウインナーを早技で奪い取った。そしてすぐに口に含むと感想を述べた。
「うまー!」
嬉しそうにもぐもぐしている。
「あぁ、僕の…」
僕は、大事なオカズを一瞬にして奪われたことにショックを受けながらも、最後のタコさんを口に入れた。
「もー…」
ちょっといじけつつも、こうして誰かと食べる事は楽しいと思った。
「アハハ、ごめんごめん。そんなにショックを受けるとは…見かけによらず、結構食い意地はってる?」
謝りながらも、またからかわれる。
「ももきくんのオカズも、1個ちょうだいよ」膨れながら言うとハイハイと笑う。
どれでもどーぞ、というとオカズがいっぱい入ってる段を僕に差し出した。
その中から1個食べると、美味しい?と聞いてくる。それに対してうん、と頷くと嬉しそうにまた笑った。
よく笑う人だと思った。
「ねーね。百城くんじゃなくて、モモで良いよ。みんなそう呼んでるし」
「もも?」
「そうそう」
一度口にしてみたが、呼び捨てにするのは何だか落ち着かない。
「モモくんじゃダメ?」
「そっちんが呼びやすいなら、それでどうぞ」
分かったとつぶやいて、早速話しかける。
「んじゃ、モモくん」
「ハイなんでしょう」
「僕の事も、好きに呼んでいいから」
そう言うと、モモくんは、何がいいかなぁと考えだした。
「くらはしだろ〜?く、ら……」
一文字づつ口にしながらあだ名をつけようとしているがなかなか思いつかないらしい。
うーんと考える仕草をする。
「下の名前は、祐貴、だっけ?」
頷いて、よく知ってるねと感心すると、一応学級委員だからね、と自慢気に言った。
「モモキとユウキって、なんか似てるね」
僕がそういうとモモくんが笑う。
「俺の場合、苗字だけどね」
「あ、そっか」
それからいろいろ考えた末。
「ユウキって呼ぶよ」
結局シンプルに、名前で呼ぶ事にしたらしい。分かったと頷くとモモくんは僕の目の前に手を差し出した。
「今更かもしれないけど!よろしくね、ユウキ」
改めてそう言われ、ちょっと戸惑ったけど、モモくんの情の厚さに感動して僕はその手を掴んだ。
思いの外ガッシリしている手に男らしさを感じながら、握手する。
「こちらこそよろしく、モモくん」
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